研究課題/領域番号 |
17K11010
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
西田 圭一郎 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 准教授 (80284058)
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研究分担者 |
大月 孝志 岡山大学, 保健学研究科, 非常勤研究員 (10534802)
廣畑 聡 岡山大学, 保健学研究科, 教授 (90332791)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | miRNA / 軟骨代謝 / メカニカルストレス / ADAM12 / 新規疾患修飾性OA治療薬 / エピジェネティクス |
研究実績の概要 |
ADAM12遺伝子のKOは軟骨細胞の肥大化に抑制的に働く可能性があることから, 本年度はATDC5細胞におけるADAM12過剰発現によるIgf-1、RUNX2の発現への影響を検討した。具体的には, 細胞にTGF-β1 (10 ng/mL; Cell signaling Technology, Beverly, MA, USA) を添加し24時間刺激した後にRNAを回収し, wild type ATDC5細胞とADAM12 KO ATDC5細胞とで比較した。さらにATDC細胞において, ADAM12過剰発現ベクターを用いて高発現させ, Igf-1, RUNX2 mRNAの発現に与える影響を検討した。その結果、TGF-β1刺激後24時間で、ADAM12とIgf-1の発現は亢進した一方で、RUNX2の発現は抑制された。野生型ATDC5細胞でTGF-β刺激後に認められたIgf-1の発現亢進やRUNX2の発現抑制は、ADAM12 KO ATDC5細胞では阻害された。さらに、ATDC5細胞において、ADAM12を過剰発現すると、Igf-1発現亢進し、RUNX2発現は抑制された。 次に、軟骨細胞におけるADAM12発現とmiR-29bとの関連をみるため、TGF-β刺激によるADAM12-LとmiR-29bの発現を検討した。正常ヒト軟骨細胞 (Lonza) に対しTGF-β1刺激後24時間での、ADAM12-LとmiR-29bの発現をreal-time PCRにより検討した。さらに、TGF-β1添加と同時に、TGF-β受容体1阻害剤であるSB525334 (APExBIO)を添加し、TGF-β1刺激の阻害による影響についても検討した。TGF-β刺激により、濃度依存性にADAM12-Lの発現が有意に亢進し、一方でmiR-29bの発現は抑制された(p<0.05)。TGF-β受容体1阻害することで、TGF-βによって誘導されたADAM12-Lの亢進とmiR-29bの抑制が阻害された(p<0.05)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究で、ヒト変形性関節症の骨棘サンプルを用いた研究では, ADAM12が内軟骨性骨化の過程で軟骨細胞分化における肥大化に関与していることが明らかとなった。また, X型コラーゲン発現 との関わりについてはATDC5細胞を用いたin vitroの研究でX型コラーゲン遺伝子の発現の前後でADAM12遺伝子が動いていることが示唆された。さらにCRISPR/Cas9 systemを用いて樹立したADAM12-KO ATDC5細胞において, 野生型ATDC5細胞と比較してX型コラーゲン発現が亢進することから, ADAM12はX型コラーゲン発現に対して抑制的な働きをしていることが判った。また、wild typeでTGF-β刺激によりIgf-1の亢進やRUNX2の抑制が誘導されたが、ADAM12-KO ATDC5細胞では、これらが阻害された。さらにATDC5細胞においてADAM12を過剰発現することにより、Igf-1の発現は亢進する一方でRUNX2の発現は抑制された。これらの結果は軟骨細胞において、ADAM12がTGF-β依存性シグナルに関与し、肥大化に関連するRUNX2およびX型コラーゲン発現を抑制することで軟骨細胞分化を調節していることを示唆している。
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今後の研究の推進方策 |
今後はADAM12をどのように人為的に制御するかを検討するため、計画どおりmiR-29bを過剰発現させることによりADAM12-L発現がどのように影響されるかを検討する。また、軟骨細胞に対し、周期的伸張刺激というメカニカルストレスを加えることで、miR-29bおよびADAM12-Lの発現がどのように変化するかを検討する。さらに、最近、我々のグループは近畿大学、京都大学の共同研究でADAM12ノックアウトマウスの樹立に成功した。本マウスの表現型の観察、実験的変形性関節症の誘導とその組織学的解析を追加していくことで、変形性関節症に対する新規治療法の確立につながるかどうかを検討していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
比較的小額であったことと、本金額で購入可能な文房具・コピー用紙などの消耗品が現時点で必要でなかったため。翌年分とあわせて、実験遂行のための消耗品、旅費等の一部にあてる予定です。
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