研究実績の概要 |
変形性関節症における荷重等の力学的負荷以外の全身因子として、慢性炎症に伴う滑膜での基質分解酵素の産生亢進が関節破壊の進行に関与していると仮説を元に検討を行った。変形性膝関節症に対して行われた人工膝関節置換術症例から同意を得て手術時に切除した滑膜組織の提供を受け、滑膜線維芽細胞を単離、培養し、炎症性サイトカイン刺激でMMP1, MMP13, ADAMTS4等の軟骨基質分解酵素の産生が亢進することを確認し、またインスリン負荷により基質分解酵素の産生が抑制されることをRNAレベル及びタンパクレベルで確認した。インスリンの作用は濃度依存性であり、高濃度であるほど基質分解酵素産生を抑制していた。またADAMTS5、BMP2などの分子はインスリンによる産生抑制効果は見られず、インスリンの作用は選択的に作用していると考えられた。次に採取直後の滑膜組織で、未治療の2型糖尿病症例、治療中の2型糖尿病症例、非糖尿病症例におけるインスリン抵抗性を評価したところ、インスリン付加後の滑膜組織でのシグナル伝達分子Aktのリン酸化が2型糖尿病症例では治療中の2型と運用病床例や非糖尿病症例と比較して低下しておりインスリン抵抗性が滑膜組織にも存在することが示唆された。このことから糖尿病症例での滑膜ではインスリンによる炎症性サイトカイン刺激による基質分解酵素産生抑制作用が低下することにより、慢性炎症に伴う基質分解酵素の産生が抑制されにくく、関節破壊につながる可能性が示唆された。
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