研究課題/領域番号 |
17K11017
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
関本 朝久 宮崎大学, 医学部, 講師 (60305000)
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研究分担者 |
帖佐 悦男 宮崎大学, 医学部, 教授 (00236837)
舩元 太郎 宮崎大学, 医学部, 助教 (20404452)
荒木 正健 熊本大学, 生命資源研究・支援センター, 准教授 (80271609)
荒木 喜美 熊本大学, 生命資源研究・支援センター, 教授 (90211705)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | Tmem161a遺伝子 / 骨代謝機能 / 可変型遺伝子トラップ法 / ロコモティブシンドローム / モデルマウス |
研究実績の概要 |
我々は、骨粗鬆症などのロコモティブシンドロームの病因・病態解明のために、『可変型遺伝子トラップ法』により樹立した変異マウス系統を用いて、骨軟骨代謝に関与する新規遺伝子探索の効率的なスクリーニングを実施している。我々はそれらトラップクローンデータをデータベース『EGTC』(Database for the Exchangeable Gene Trap Clones, http://egtc.jp) に公開し、骨軟骨代謝に異常をきたす疾患モデルマウスライブラリーを構築中である。現在このEGTCデータベースに登録したクローンから、特に骨軟骨にトラップした遺伝子の発現のみられるクローンを選別し、その遺伝子欠損マウスを作製して骨軟骨表現型および遺伝子機能を解析している。 そのライブラリーマウスの中で、Tmem161a (Transmembrane 161a) 遺伝子欠損マウスは、骨軟骨スクリーニングにおいて、マイクロCTおよび骨形態計測では明らかな骨量増加を認め、骨力学試験では骨強度増大、そして病理組織では骨軟骨組織異常を示す骨表現型を呈していた。Tmem161aは酸化ストレスに関与するタンパク(Montesano, 2006)で、骨代謝障害の要因は酸化ストレスの亢進も関与することから、骨代謝においても重要な遺伝子である可能性が考えられるが、これまでin vivoでの骨代謝における機能について報告例はない。 これまでの1次・2次スクリーニングの結果より、Tmem161aは骨代謝において重要な機能を担っている可能性が高いと考えられる。現在我々は可変型遺伝子トラップ法で作製したTmem161a遺伝子欠損トラップマウスを用いて、Tmem161a遺伝子の骨代謝を中心とした詳細な機能解析を遂行している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在我々は『可変型遺伝子トラップ法』によって樹立されたトラップクローンを用いて、骨軟骨代謝に関与する新規遺伝子群の効率的なスクリーニングによる骨軟骨疾患モデルマウスライブラリー構築に取り組んでいる。 今回、前述のEGTCデータベースを用いてそのライブラリーマウスの骨/骨髄組織に発現する遺伝子を検索したところ、Tmem161a遺伝子でESTプロファイルが高スコア(Tmem161a:153:bone 146, bone marrow 7)を示した為、Tmem161a遺伝子トラップクローンからホモ・ヘテロ接合体マウスを作製し、骨軟骨表現型をスクリーニングしている。 Tmem161a遺伝子は8番染色体に存在し、8つの膜貫通ドメインから成り、主に細胞膜に発現が認められる。我々の作製したTmem161a欠損トラップマウスにおいて、Tmem161a遺伝子のvector insertion pointは5‘RACE法、インバースPCR法で解析を行い、第1イントロンであることを確認した。また、Trap vectorはゲノム上の1か所のみに挿入されていることをサザンブロッティング法にて確認した。遺伝子型を解析しえた個体の出生数は野生型:322、ヘテロ型:677、ホモ型:264(出生率は1:2.10:0.82)であった。Tmem161aホモマウスは短命ではなく、出産も可能であった。ヘテロマウスを用いた導入遺伝子の発現解析(X-gal染色)から、Tmem161aは骨端線周囲海綿骨や大腿骨頭軟骨が染色され、骨組織を含む多くの組織に発現していた。ホモマウス大腿骨におけるマイクロCTおよび骨形態計測では明らかな骨量増加を認め、骨力学試験では骨強度増大、そして病理組織では骨軟骨組織異常を示す骨表現型を呈していた。したがって、Tmem161aは骨代謝において重要な機能を担っている可能性が高いと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
Tmem161aは酸化ストレスに関与するタンパクのひとつであり(Montesano, 2006)、骨代謝障害の要因は酸化ストレスの亢進も関与することから、骨代謝においても重要な遺伝子である可能性が考えられる。しかしながら今回の研究対象であるTmem161aの骨代謝における機能は未だ不明で、さらにノックアウトマウスを用いたin vivoでの報告は無く、これまで骨組織、骨代謝に言及した報告は皆無である。 また、我々のTmem161aトラップマウスに特徴的なことは、ホモマウスはnullで、短命ではなく生後一定期間生育可能であり、かつ明らかに骨形成能が亢進している。また出産も可能である。このためin vivoでホモマウスの実験が可能であるというメリットがある。したがって、今後もTmem161a遺伝子欠損トラップマウスを用いて、その骨代謝における機能を解析して行く計画である。既にTmem161a欠損トラップマウスは骨軟骨1次スクリーニング (EST profile、X-gal染色) で骨表現型異常を呈していた為、今後は2次スクリーニング (マイクロCT、骨形態計測、骨力学試験、病理組織解析) を個体数や計測時期を増やして進めて行く計画である。さらに骨代謝関連遺伝子群のリアルタイムPCR、アリザリンレッド・トルイジンブルー等骨組織染色各種、免疫染色、透過型電子顕微鏡解析や、in vitroにおける骨芽細胞培養実験等も実施する予定である。 本研究によりTmem161aの骨代謝における機能を解明できると考える。さらに我々が作製したTmem161a欠損マウスは、バイオリソースとして骨粗鬆症治療薬開発などの様々な研究分野での有効活用が期待できる。
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