研究課題/領域番号 |
17K11020
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
永谷 祐子 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (90291583)
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研究分担者 |
浅井 清文 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (70212462)
野崎 正浩 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 助教 (00509309)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 関節リウマチ / 滑膜細胞 / グリオスタチン / チミジンホシホリラーゼ / ヒアルロン酸 |
研究実績の概要 |
関節リウマチ(RA)治療は劇的に進歩し、発症早期からの抗リウマチ薬、生物学的製剤、低分子シグナル伝達阻害剤の導入により、治療は寛解をめざすものになった。しかしながら未だいずれの治療にも反応しない薬剤耐性難治性患者や、炎症が鎮静化されたにも関わらず骨びらんの進行がみられる患者が存在する。 GLSはチミジンホスホリラーゼ活性をもち、in vivo、in vitroにおいて血管新生作用を有している。申請者らは、RAの発症に、GLSが密接に関与していることを初めて見いだした。すなわち、RA患者の関節液中には高濃度にGLSが存在し、血清GLS濃度はRAの病勢も反映している。ウサギを用いたin vivoの実験系にて、GLSの関節内投与によりリウマチ様の慢性滑膜炎と関節軟骨破壊が惹起されることを確かめた。またGLSは滑膜細胞に作用し、軟骨基質を破壊するマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)群の発現を増強することを報告した。 変形性膝関節症(OA)、RAの局所治療法のひとつに高分子ヒアルロン酸(HMW-HA)の関節内注射が広く行なわれている。ヒアルロン酸は分子量の違いによりその生理活性は大きく異なり、また細胞の種類によって作用が異なる。血管内皮細胞、軟骨細胞、マクロファージなどでは作用機序が明らかにされつつあるが、滑膜細胞に対する研究はいまだ少ない。本研究ではRAおよびOA由来の培養滑膜細胞を用いて、 HMW-HAが血管新生因子を制御する機序を明らかにし、滑膜炎や関節破壊を防止する効果的かつ安全なHMW-HAによる局所治療方法を確立することを最終目標としている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
人工膝関節置換術、関節鏡視下滑膜切除術のさいに患者の承諾を得て採取した滑膜を培養し、3から9代継代し形態学的に均一な線維芽細胞様滑膜培養細胞 (FLSs) の樹立、継代維持は安定供給されている。継代したFLSsは免疫組織学的手法にて表面マーカーを検討し、線維芽細胞様滑膜細胞であることを確認し、細胞の性質が変化ない事を適時確認している。 FLSsでは、TNFによってGLSが誘導されるが、その機序は明らかにされていない。29年度には、TNFによって細胞質内あるいは核内のSp1の発現に変化がおこるかWestern blotを用いて検討した。TNFによるSp1の核内移行の上昇が観察され、これによりGLSが誘導されていると推察された。またnuclear factor-kB (NF-kB)やmitogen-activated protein kinase (MAPK)シグナルの関与も示唆されるため、NF-kB阻害剤(SN50、MG132)、MAPKシグナルのextracellular signal-regulated kinase1 and 2 阻害剤(PD98059)、c-jun N-terminal kinase阻害剤 (SP600125)、p38 MAPK阻害剤(SB203580、SB202190)、蛋白合成阻害剤であるcycloheximideを使用してpretreatment後にTNFα刺激を行い、GLS産生が抑制されるかを検討した。cycloheximideにてGLS mRNAの誘導が抑制されたことより、TNFによるGLSの誘導にはなんらかのタンパク因子の関与が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
関節の構成細胞の一つである軟骨細胞に着目し、軟骨培養細胞でのGLSおよびMMPsタンパク発現の同定を行う。 抗GLS抗体を用いて軟骨培養の細胞免疫染色を行い、GLSの産生を検討し、TNF-αとSp1阻害剤であるmithramycinにて前処置を行いその影響を評価する。さらにSp1 small interfering RNA (siRNA)を作製し、GLSの産生抑制効果を同様に検討する。Sp1はRAにおける骨軟骨破壊をもたらすMMPsの発現調節にも関与しており、軟骨細胞に豊富に存在するMMPsをSp1干渉にて制御できれば、さらなる抗リウマチ効果が期待される。 Thymidine phosphorylase (TP) 阻害剤 (TPI)を用いた関節炎抑制を試みる。このTPIを用いて、TP酵素活性を阻害することが、RAの病態抑制に有用かを、in vitro、in vivoにて検討する。我々の以前の研究でTP酵素活性を持たないGLSがウサギ関節炎を惹起することを明らかにした。しかしすでに完成された関節炎に対するTPIの効果は検討していなかった。近年TPIを用いた大腸癌の抗腫瘍剤が上市され、その有効性が認識されている。そこでRA FLSsを用いてGLSによって誘導されるVEGFをはじめとした血管新生作用因子が、TPIによって抑制されるかを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度の研究実績を英語論文として発表予定であったが、論文作成が遅れ次年度に持ち越した。そのため英文校正費と投稿費用を次年度に持ち越した。
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