研究実績の概要 |
身体の中で「1日」を刻むメカニズムである体内時計は、Per1-3, Cry1-2, Bmal1, Clockといった一群の時計遺伝子が形成する複雑で精巧な転写・翻訳のフィードバックループから構成される。体内時計の中枢は視床下部視交叉上核に存在するが、それ以外の末梢臓器、例えば肝臓や軟骨でも時計遺伝子は概日リズム(約1日周期のリズム)を刻んで発現する。軟骨の時計は、単離・組織培養下でも明瞭な概日リズムを刻み、生理的意義を持つと考えられるが、その詳細は明らかではない。特に、臓器レベルでの体内時計の意義を検討するためには、組織全体を視野にいれて観察が可能なデバイスを用いることが肝要である。平成29年度には、軟骨の体内時計の意義に迫るために、体内時計の発光レポーター遺伝子をもつPER2::LUCノックインマウスを用い、マクロイメージング装置を持ちいた、軟骨の体内時計の発光イメージングを試みた。 これまで成功例を重ねてきた大腿骨のイメージングを行った。従来報告してきた通り、大腿骨を単離して発光の時系列変化を観察した場合、膝関節部の成長軟骨板や大腿骨頭、膝関節部関節軟骨に概日リズムが認められた。さらに、椎骨、椎間板の発光イメージングを試みた。椎骨が連なった状態で外部に単離し、組織培養下に発光を観察したところ、椎間軟骨および椎間板に強い発光概日リズムを認めた。さらに椎骨と椎間板を単離して計測したところ、やはり椎間板に明瞭な概日リズムを認めた。さらに、過去の報告に倣い、培養液中にサイトカインを投与したところ、投与のタイミング依存的に概日振動に変化が生じた。このことから、椎間板の組織培養が成功したことが明らかであった。この他、肋軟骨における体内時計の発光イメージングにも成功した。
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