本年度は、軟骨の体内時計に対する摂動を可能にする遺伝子改変動物の開発を進めた。Per2-dLucレポーターをもつ遺伝子改変ラットに、時計遺伝子BMAL1のドミナントネガティブ体を導入した動物を作成した(BMAL1 DN (+) TGラット)。Per2-dLucレポーターは時計遺伝子Per2プロモーターの下流に易分解性ルシフェラーゼ(destabilized luciferase; dLuc)が発現する構造をとり、発光リズムを通じて体内時計の状態を追跡することが可能である。BMAL1 DN (+) TGラットは、神経特異的にBMAL1ドミナントネガティブ体を発現するよう導入遺伝子を設計したが、逆転写PCR法によってRNAレベルではBMAL1ドミナントネガティブ体が軟骨でも発現することが確認された。椎間板の器官培養を行って、軟骨の発光概日リズムを検討した結果、成獣では野生型とBMAL1 DN (+) TGラットの間に著明な変化は見られなかった。しかしながら、生後0日目、および7日目では、BMAL1 DN (+) TGラットにおいて顕著な振幅低下が認められた。 生後0日目、7日目で採取した椎間板を器官培養した結果と成獣で採取した椎間板を培養した結果を比較した場合、発光リズムのピーク位相が遅れていくことを観察した。この傾向はBMAL1 DN TG (+)ラットでも同様であったことから、細胞個々の体内時計の成熟過程を反映するというよりはむしろ、軟骨組織の成熟を反映すると考えられる。
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