研究課題
脊椎動物の骨格は、膜性骨化または内軟骨性骨化によって形成される。 我々は、任意のタイミングで転写共役因子Smad4を欠失する遺伝子改変マウス(Smad4 cKOマウス)を樹立した 。このマウスは、Cre-LoxPシステムにより、 タモキシフェン誘導性にSmad4を欠失させることができる。Smad4は、胎生期の骨格形成に重要なTGF-bファミリーの細胞内シグナルに必須の因子である。しかし、成体マウスでSmad4を欠失させると骨量が著しく増加することを見出した。本研究では、Smad4を介したシグナルの生理的な骨格制御機構を解明することを目的とする。我々の解析から、Smad4 cKOマウスは、骨端成長板が拡張し、海綿骨が増加していることが判明している。平成29年度は、研究計画に沿って、免疫組織染色による解析、老年Smad4 cKOマウスの解析、皮質骨と海綿骨の比較解析を行った。成熟骨芽細胞の指標であるオステオカルシンの免疫組織染色を行うと、一次海綿骨でオステオカルシン陽性の骨芽細胞が増加していることがわかった。TGF-bシグナルの活性化の指標であるリン酸化Smad3の免疫染色を行うと、肥大軟骨細胞で陽性であった。老年マウスにタモキシフェンを投与し、Smad4を欠失させても骨量増加が認められなかった。一方で、骨端成長板の拡張は観察できた。この結果は、Smad4 cKOマウスが骨成長に伴い骨量が増加することを示唆する。さらに、マイクロCTによる三次元解析から、Smad4 cKOマウスは、コントロールと比較して皮質骨の骨量に変化がないことが判明した。これらの結果から、Smad4を介したシグナルが、軟骨細胞を分化を抑制し、骨芽細胞分化を抑制している可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
Smad4 cKOマウスの骨組織切片を使った免疫組織染色によって、in vivoでSmad4が軟骨細胞分化を抑制し、骨芽細胞分化を抑制している可能性が示唆された。また、マイクロCT解析によって、Smad4 cKOマウスは、骨成長に伴う内軟骨性骨化を亢進していることが明らかとなった。この結果から、Smad4 cKOマウスの骨量が増加する標的細胞は、軟骨細胞である可能性が高いと考えられる。
平成29年度の結果から、Smad4 cKOマウスは軟骨細胞を標的にして、骨量を増加させている可能性が考えられる。よって、研究計画に沿って、Smad4 cKO軟骨細胞を調整し、骨格制御に重要であることが報告されているリガンドや、アンタゴニスト、受容体などの発現解析を行う。さらに、発現変化が確認された標的分子は、組織免疫染色で発現部位の検討を行う。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 6件)
Bone
巻: 111 ページ: 101~108
10.1016/j.bone.2018.03.015
巻: 109 ページ: 241~250
10.1016/j.bone.2017.07.024