研究課題/領域番号 |
17K11026
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研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
塚本 翔 埼玉医科大学, 医学部, 助教 (20707658)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 骨・軟骨代謝学 / 内軟骨性骨化 / 骨形成 |
研究実績の概要 |
TGF-βファミリーは、骨格の形成や機能に重要な役割を果たす成長因子群である。TGF-βファミリーの細胞内シグナルは、複数の転写因子R-Smadによって核内に伝達され、標的遺伝子の転写が制御される。R-Smadの転写活性には、転写共役因子Smad4が必須であると考えられている。本研究では、タモキシフェン投与によって誘導性にSmad4をノックアウトできるマウス (Smad4 cKOマウス)を樹立し、出生後におけるSmad4を介したシグナルの生理的な骨格制御機構の解明を目的とする。平成29年度の解析から、Smad4 cKOマウスは、骨成長に伴い海綿骨の骨量が著しく増加し、軟骨細胞を標的として骨量が増加している可能性が示唆された。そこで、平成30年度は、Smad4を介した骨格制御遺伝子の発現解析及び、Smad4シグナルを制御するリガンド解析を行った。免疫組織染色による解析から、Smad4 cKOマウスの海綿骨は、Wntシグナルの指標であるβ-catenin陽性の骨芽細胞が増加していることがわかった。そこで、成長板軟骨における、Wntシグナル関連分子の発現を検討した。すると、Smad4 cKOマウスは、Wnt7bの発現が亢進していることが判明した。Wnt7bの骨形成に対する作用をin vitroで解析するために、初代骨芽細胞を調整しWnt7b処理を行った。すると、Wnt7bで処理した骨芽細胞は、石灰化骨様結節数が増加した。さらに、Wnt7bの発現を制御するTGF-βファミリーのリガンド探索を行った。初代軟骨細胞にBMP及びTGF-β処理を行うと、BMP刺激した軟骨細胞でのみ短時間でWnt7b mRNAの発現低下が認められた。以上の結果から、Smad4を介したBMPのシグナルが、軟骨細胞の分泌するWnt7bを抑制し生理的な内軟骨性骨化を抑制している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本申請課題の平成30年度の解析は、研究計画に沿って順調に進展した。Smad4 cKOマウスの解析を着実に進め、骨量増加を引き起こす候補分子の一つとしてWnt7bを同定した。さらに、Wnt7bは、Smad4を介したBMPのシグナルによって制御されている可能性が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度の免疫組織染色及び分子生物学的解析から、内軟骨性骨化が亢進し骨量が増加するSmad4 cKOマウスは、Wnt7bの発現が亢進し骨量が増加している可能性が示唆されたため、当初の研究計画に加えて、in vitro及びin vivoにおけるWnt7bの骨格形成における役割を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
一般試薬及びディスポーザブル器具の使用量が、当初の想定よりも少なかったため。また、予定していた学術集会の参加を見送ったため。 翌年度の一般試薬及びディズポーザブル器具の購入に使用予定であり、本年度の研究実績を含めて、学術集会での発表を行う予定である。
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