研究課題/領域番号 |
17K11029
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
高橋 康仁 東京医科大学, 医学部, 助教 (60567668)
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研究分担者 |
松永 怜 東京医科大学, 医学部, 助教 (90459579)
澤地 恭昇 東京医科大学, 医学部, 助教(特任) (20571152)
宍戸 孝明 東京医科大学, 医学部, 准教授 (70266500)
香取 庸一 東京医科大学, 医学部, 臨床講師 (40233837)
立岩 俊之 東京医科大学, 医学部, 講師 (00424630)
山本 謙吾 東京医科大学, 医学部, 教授 (10246316)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 膝靱帯 / 近赤外ラマン分光 / 細胞外マトリックス / I型コラーゲン |
研究実績の概要 |
本研究では近赤外ラマン分光を応用し、人間の膝靱帯の質的評価を行うための高精度且つ低侵襲の診断技術開発を目的としている。初年度は、前十字靭帯(anterior cruciate ligament: ACL)を対象に、低SN比の明瞭な近赤外分光スペクトルを安定に取得できるような条件設定および計測手法の確立に取り組んだ。励起波長785nmの近赤外半導体レーザーを使用し、検出器は近赤外対応高感度冷却CCDを用い、分光器のグレーティングは600 grooves/mmを使用した。スペクトル計測に伴う前処理やホルマリン固定などによるアーチファクトの影響を受けないよう、全ての検体は手術時に切除後、直ちにラマン分析された。ACLでは、500-1800cm-1の波数領域にI型コラーゲンやプロテオグリカンなどの細胞外マトリックス由来の明瞭なバンドが複数検出された。強い蛍光バックグランドは、5次多項式関数を用いることで除去した。標準試料を用いた計測や文献検索を通したバンド帰属の照合により、ACLにおける主要なラマンバンド帰属を同定した。またamide Iおよびamide III構造由来の複数のバンド強度が、コラーゲンの二次構造を反映していたことから、靱帯変性の有力なバイオセンサーになり得るものと考えている。安定したスペクトル計測およびバンド帰属の同定が終了しているため、現在は手術時に採取したACLの変性度を病理組織学的にスコアリングし、検体数を増やしながら、変性度の違いに伴うラマンバンドの変化を系統的に分析している段階である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
膝靱帯における近赤外ラマンスペクトルの計測および各バンド帰属の同定に成功しており、今後は系統的に分析を進められるため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は更に健常・変性群の検体数を増やし、データ信頼性を向上させる。靱帯変性に対して特異的に変化するラマンバンドを主成分分析を用いて特定し、診断技術としての有用性についてより具体的な検証を行う。また組織変性に特にかかわりの深い分子構造ブロックを明らかにすることで、靱帯変性機序の考察へ繋げることを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究がより本格化する次年度以降では更に多くの予算が必要になることや、想定外の支出が必要となった場合に研究の進行に支障を来すことがないよう、前年度予算を僅かに繰り越すこととした。
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