研究課題/領域番号 |
17K11030
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
大脇 敏之 東京医科大学, 医学部, 客員准教授 (70453834)
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研究分担者 |
溝口 出 東京医科大学, 医学部, 講師 (00569527)
善本 隆之 東京医科大学, 医学部, 教授 (80202406)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 間葉系幹細胞 / IL-27 / IL-35 |
研究実績の概要 |
今年度は、間葉系幹細胞(MSC)として、ヒト臍帯血由来MSC(UCB-MSC)を用い、まず、各種サイトカイン(IFN-γ、TNF-α、IL-35、IL-27)を含む培地で培養した後、それらUCB-MSCの遺伝子発現を定量リアルタイムRT-PCRにて、また培養上清液のIL-27産生をELISAにて測定した。その結果、IFN-γ、TNF-αといったサイトカイン刺激により、IL-27 のサブユニットである IL-27p28とEBI3の遺伝子発現と IL-27産生が有意に上昇した。また、抗炎症性サイトカインであるIL-35の刺激においてもIL-27p28遺伝子発現亢進と IL-27産生上昇が観察された。さらに、IFN-γ、TNF-α刺激により、MSCの免疫調節に関与するICAM-1、VCAM-1、PD-L1等の細胞膜タンパク質、インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)、TNF-Stimulated Gene 6 (TSG-6) の遺伝子発現の亢進に加えて、共刺激により更なる増強が認められた。この増強効果はIL-27関連遺伝子、並びにIL-27産生にもその相関がみられたことから、IL-27がUCB-MSCの免疫調節因子発現に影響を与えているという可能性を示唆している。そこで、抗IL-27中和抗体を用いて、IFN-γとTNF-αの共刺激性遺伝子発現増強への関与をみてみると、PD-L1, IDO, TSG-6といった調節因子の遺伝子発現が有意に減弱された。さらに、この抗IL-27中和抗体を用いた実験において、IL-27p28発現に加えて、IL-27産生も顕著な抑制が観察された結果から、IL-27のオートクラインがIL-27産生上昇に必須であることが想定された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
MSCへの免疫抑制機能へのIL-27の関与について、現在検討中であるため、当初の予定よりやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
1.MSCの免疫抑制機能発揮における内在性IL-27およびIL-35の関与:昨年度の検討より、MSC のIL-27に対する中和抗体により、IFN-γとTNF-αによるPD-L1, IDO, TSG-6といった調節因子の遺伝子発現が有意に減弱された。そこで、この時のMSCの免疫抑制機能発揮への効果を、抗CD3抗体と抗CD28抗体の刺激やアロジェニックな刺激によるヒト末梢血単核球T細胞の細胞増殖やサイトカイン産生を測定し、調べる。次に、それぞれの調節因子の発現をsiRNAや中和抗体、阻害剤等で抑制した際の影響を調べ、エフェクター分子の同定とその作用機序を明らかにする。 2.MSCの分化誘導能におけるIL-27とIL-35の役割:IL-27およびIL-35の中和抗体を共存下でMSCの分化能を比較検討し、内在性IL-27/IL-35の役割を明らかにする。MSCから脂肪、軟骨、骨芽細胞、さらに、神経細胞へのin vitro分化誘導能は、既報に従いそれぞれ特異的な分化誘導条件下で培養し、オイルレッド染色、アルシアンブルー染色、アリザリンレッド染色、ニッスル染色で検出する。 3.MSCの組織再生修復能におけるIL-27とIL-35の効果:MSCをIL-27/IL-35刺激後、リアルタイムRT-PCRで血小板由来成長因子や塩基性繊維芽細胞増殖因子などの組織再生修復関連遺伝子の発現増強を調べ、その関与もsiRNAを用いて検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
予算をピッタリ合わすことが難しかったため。
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