研究実績の概要 |
平成29年度は、生物学的製剤を投与中の関節リウマチ患者の血液検体を用いて、血中酸化ストレスの指標となるreactive oxygen metabolites (ROM)が、投与1年(52週)後の臨床的寛解予測に有用なバイオマーカーとなりうるかどうかを検証した。 対象は生物学的製剤・ナイーブ54例(男性12例、女性42例)、年齢: 59.8±13.6 (21-76) 歳、罹病期間: 7.26±10.8 (1-52) 年である。バイオ開始後12週の血中ROM, CRP, MMP-3, HAQ, DAS28-ESR, CDAI, SDAIと52週の全ての臨床的寛解 (DAS28-ESR, CDAI, SDAI, Boolean) の関連を検討した。各寛解基準を用いて52週の寛解、非寛解群に分け、12週における上記の因子について単変量解析を行い、有意差 (p<0.05) のあった因子を多重ロジスティック回帰分析(強制投入法)で検討した。さらにROC解析によってそのカットオフ値を求めた。 52週の各寛解の割合はDAS: 69%, CDAI: 54%, SDAI: 57%, Boolean: 56%であった。多変量解析の結果、12週のROMは52週のSDAIおよびBoolean寛解と有意に関連した (OR: 0.989, 95%CI: 0.978-1.000)。ROC解析の結果、SDAIおよびBoolean寛解のROMのAUCは共に0.746、カットオフ値は389.5(感度0.550, 特異度0.923)であった。CRP, MMP-3はどの寛解予測因子にも残らなかった。 感度は低いものの、バイオ開始後12週のROMは52週のSDAIおよびBoolean寛解の予測因子であった。血中ROM値は早期寛解を目指した治療戦略における有用なバイオマーカーになりうる。
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