研究実績の概要 |
【背景】IL-6受容体抗体であるトシリズマブ(TCZ)は投与直後から炎症反応を強力に抑制するが、実際の患者の症状との間に乖離が見られることがある。平成30年度は、TCZを投与中の関節リウマチ患者の血液検体を用いて、血中酸化ストレスの指標となるreactive oxygen metabolites (ROM)が、投与1年(52週)後の臨床的寛解予測に有用なバイオマーカーとなるかどうかを検証した。 【方法】対象はTCZ・ナイーブ32例、他剤からTCZのスイッチ14例の計46例であり、開始時年齢60.1 (21-83) 歳、罹病期間8.1 (1-52) 年である。TCZ開始後4, 12週の血中ROM, CRP, MMP-3と52週の臨床的寛解 (DAS28-ESR, CDAI, SDAI, Boolean) の関連を検討した。各寛解基準を用いて52週の寛解、非寛解群に分け、4, 12週における上記の因子について統計学的解析を行い、有意差のあった因子をROC解析により、そのカットオフ値を求めた。 【結果】52週の各寛解の割合はDAS: 78.3%, CDAI: 47.8%, SDAI: 52.2%, Boolean: 52.2%であった。4週ではいずれも寛解、非寛解群に有意差はなく、12週ではDAS, SDAI, Boolean寛解群のROMは非寛解群よりも有意に低値であった。ROC解析の結果、DAS寛解のROMのカットオフ値は305.5 (正常値<300)U.Carr(感度70%, 特異度72.2%)であり (AUC = 0.735, p = 0.024)、12週ROMは52週DAS28-ESRと高い相関を示した (p < 0.01, r = 0.597)。しかしながら,SDAI, Boolean寛解の予測にはならず,CRP, MMP-3はどの寛解予測にもならなかった。
|