研究課題/領域番号 |
17K11033
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
中川 晃一 東邦大学, 医学部, 教授 (30400823)
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研究分担者 |
中島 新 東邦大学, 医学部, 准教授 (60583995)
玉田 靖 信州大学, 学術研究院繊維学系, 教授 (70370666)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 軟骨再生 / 滑膜細胞 / フィブロイン / 線維芽細胞増殖因子 |
研究実績の概要 |
本研究では、遺伝子組換えカイコより精製した線維芽細胞増殖因子2(Fibroblast growth factor2, 以下FGF2)融合フィブロインを利用し、より層の厚い移植用ヒト滑膜細胞シートを作製することを目的としている。平成30年度は前年度と同条件で作製した細胞シートを、培養開始後1週目から200 ng/mlのrhBMP2を添加した軟骨分化誘導培地(DMEM high glucose, 1% ITS mix, 160μg/ml sodium pyruvate, 100 ng/ml dexamethasone, 0.2 mM Asc2-P, 10ng/ml TGF beta-3 )に変更して培養し、軟骨分化についての評価を行った。Wild-type フィブロイン群、FGF2 融合フィブロイン群で比較検討した。組織学的検討としては、HE、トルイジンブルー、サフラニン-O による染色と抗S100蛋白抗体および抗II型コラーゲン抗体を用いた免疫染色を行い、軟骨分化を評価した。生化学的検討として、滑膜細胞層をpapainにて酵素処理後、DNA量(ヘキストダイによる定量)、プロテオグリカン含有量(DMMB法)、コラーゲン含有量(HPLCによるハイドロキシプロリン量)を測定した。またRNAを抽出し、real-time RT-PCR法によるI, II 型コラーゲン、アグリカン、Sox9の遺伝子発現定量を行った。FGF2 融合フィブロイン群ではHE染色にて対照群と比較して厚い細胞層が形成され、サフラニン-O 染色、抗S100蛋白抗体および抗II型コラーゲン抗体を用いた免疫染色ではほぼ同等の染色性を示した。組織あたりのDNA量は軽度増加、プロテオグリカン含有量、コラーゲン含有量は同等ないしは軽度低下していた。II 型コラーゲン、Sox9の発現量は同等であったが、アグリカン発現量は軽度低下していた。これらの結果は、滑膜細胞を採取した個体により差が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度は前年度と同様の条件下でWild-type フィブロイン、FGF2 融合フィブロイン上で作製した細胞シートを、培養開始後1週目から軟骨分化誘導培地に変更して培養し、軟骨分化についての評価を行った。FGF2 融合フィブロイン群では、HE染色にて対照群と比較して厚い細胞層が形成され、サフラニン-O 染色、抗S100蛋白抗体および抗II型コラーゲン抗体を用いた免疫染色では同等の染色性を示した。組織あたりのDNA量は軽度増加、プロテオグリカン含有量、コラーゲン含有量は同等ないしは軽度低下していた。II 型コラーゲン、Sox9の発現量は同等であったが、アグリカン発現量は軽度低下していた。これらの結果は、やはり前年度と同様に滑膜細胞を採取した個体により細胞シートの厚さには差がみられた。そこで、FGF2 融合フィブロイン群が軟骨分化にも有用であるという結果を確証するために、軟骨分化能を有するヒト由来骨髄間葉系幹細胞株(RCB2163)を使用して同様の実験を行うことを試みているが、その結果はまだ完全には得られていない。滑膜細胞の結果からは(採取した個体にもよるが)、FGF2 融合フィブロインの使用により細胞シートの厚さを増加させることはできるが、軟骨への分化誘導に関しては抑制される可能性もあることが示唆された。現時点で、研究はほぼ予定通りに進んでいると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
過去2年間の研究により、FGF2 融合フィブロイン上で作製したヒト滑膜細胞シートは、対照群と比較して厚くなるが軟骨分化誘導した際の分化がやや抑制される場合がある(個体差有り)と考えられた。そこで、FGF2 融合フィブロインを使用することが細胞シートの軟骨分化に及ばす影響に関して、引き続きヒト由来骨髄間葉系幹細胞株(RCB2163)を用いた検証も行っていく予定である。その一方で、当初より予定していたヒト軟骨組織片との共培養を行い軟骨分化促進効果について解析する。手術時に滑膜組織と同時に採取した比較的変性の少ない外側コンパートメントの関節軟骨組織を2mm角の大きさに細切する。Tissue culture insert上に滑膜細胞を播種したWild-type またはFGF2融合フィブロインスポンジを置き、プレートには細切軟骨片を置いて共培養を行う。30年度と同様に軟骨分化誘導培地で培養し、滑膜細胞層の軟骨分化につき評価する。組織学的検討としては、HE、トルイジンブルー、サフラニン-O による染色と抗S100蛋白抗体および抗II型コラーゲン抗体を用いた免疫染色を行い、軟骨分化を評価する。生化学的検討として、滑膜細胞層をpapainにて酵素処理後、DNA量(ヘキストダイによる定量)、プロテオグリカン含有量(DMMB法)、コラーゲン含有量(HPLCによるハイドロキシプロリン量)を測定する。またRNAを抽出し、real-time RT-PCR法によるI, II 型コラーゲン、アグリカン、Sox9の遺伝子発現定量を行う。以上の解析結果は、検体を得た症例の年齢、滑膜病理組織学的所見によっても比較検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度は細胞増殖に関する検討を中心に行い、培養期間が比較的短くて済んだため、ウシ胎児血清、細胞培養試薬、消耗品の使用量が予定より少なかった。平成30年度は主に軟骨分化に関する評価を行うため培養期間が長くなり、前年度よりもウシ胎児血清、細胞培養試薬、消耗品の使用量が多くなる他、ヒト由来骨髄間葉系幹細胞株RCB2163による条件検討を行うことで、予定よりさらに使用量が増えると予想されていた。しかし、ヒト由来骨髄間葉系幹細胞株RCB2163もよる実験がやや遅れたため、使用料が予定より少なくなり、次年度使用額が生じた。次年度使用額については、今年度配分額と合わせて、ウシ胎児血清、細胞培養試薬、培養機器、その他の消耗品、増殖因子、組織評価用試薬、生化学的検査用試薬等の購入に使用する予定である。
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