研究課題/領域番号 |
17K11035
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研究機関 | 聖マリアンナ医科大学 |
研究代表者 |
遊道 和雄 聖マリアンナ医科大学, 医学研究科, 教授 (60272928)
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研究分担者 |
油井 直子 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 講師 (20266696)
唐澤 里江 聖マリアンナ医科大学, 医学研究科, 講師 (50434410)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 変形性関節症 / メカニカルストレス / ストレス応答蛋白 / NAD依存性脱アセチル化酵素活性 |
研究実績の概要 |
我々はこれまでに、変性軟骨由来の軟骨細胞のエネルギー代謝(グルコース取り込み、アデノシン三リン酸ATP産生)は、正常軟骨細胞に比べて低下していること、ATP産生量を制御する細胞内のエネルギーセンサーとしての役割を担う5'-AMP-activated protein kinase (AMPK) 活性も変化することを見出した。さらに、最近我々は軟骨細胞に発現する「NAD依存性脱アセチル化酵素活性」を持つSirtuin1が、「エネルギーセンサーであるAMPK活性」を制御していることを初めて見出した。 我々は、AMPKは細胞エネルギー(ATP)産生量を調節する機能を有することから、変形性関節症の軟骨細胞において「エネルギーセンサーとしての役割を持つAMPKとSirtuin1の相関」は細胞エネルギー代謝に重要な役割を担い、メカニカルストレスに応答して変化し、軟骨変性にも関与すると仮説した。 そこで、1)メカニカルストレスに対する軟骨細胞のストレス応答蛋白と応答機構を解析し、メカニカルストレスに対する防御機構としてのストレス応答機構の変化が軟骨変性に関与するか否かを明らかにし、2)メカニカルストレス条件下の軟骨細胞において、DNA修復酵素(APEX2, Ogg1)の活性と細胞エネルギー代謝・調節機構の変化を解析し、ストレス応答の防御機構としての役割を検証する計画である。これらの調節機構の変化・破綻が、軟骨変性の誘因となるか否かを実験的変形性関節症モデルで検証し、軟骨変性抑制法の開発に発展させる予定である。 本研究は、変形性関節症の発症に密接に関わるメカニカルストレスに対する軟骨細胞の応答機構の分子メカニズムに着目し、軟骨変性機序との関連について解明を試みる初めての基礎的研究である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験的メカニカルストレス実験モデルを用いて、メカニカルストレス負荷、非負荷後の2群の培養軟骨細胞株を樹立し、メカニカルストレス応答蛋白候補群、データベース・検索論文情報をもとに有力候補因子を3~5個選定した。これらの候補蛋白の欠損軟骨細胞 (RNA干渉法, siRNA)および過剰発現軟骨細胞を既報に則って樹立し、これらの軟骨細胞活性を正常軟骨細胞活性と比較して、ストレス応答後の細胞内情報伝達路を解析中である。 さらに、変性軟骨組織におけるストレス応答蛋白発現度と軟骨変性度との関連を免疫組織学的解析に検討した。実験動物モデルマウスの膝関節組織および変形性関節症患者から同意を得て採取した軟骨組織におけるストレス応答蛋白発現度を、免疫組織学的に解析し、軟骨組織の変性度および臨床的背景との関連を分析した。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、メカニカルストレスに応答する軟骨細胞のDNA修復酵素活性とエネルギー代謝の調節機構解析を行なう計画である。実験的メカニカルストレス負荷・非負荷後の軟骨細胞において、これまでに解析してきた「DNA修復酵素(APEX2, Ogg1)」ならびに「細胞エネルギー代謝関連因子(ATP産生量、エネルギーセンサーとしてのAMPK・Sirtuin1活性)」を分析する。実験的メカニカルストレスに応答した各因子の変化、ならびに各因子群の相関を解析することで、メカニカルストレスに応答する「DNA修復酵素活性」および「エネルギー代謝」の調節機構が、軟骨細胞活性および軟骨変性に影響するメカニズムを明らかにする。 さらに、次年度に向けて、DNA修復酵素(APEX2、Ogg1)および細胞エネルギー調節因子(AMPK, Sirtuin1他)について、RNA干渉法を用いた各因子の欠損細胞株および遺伝子導入による過剰発現細胞株を樹立し、軟骨異化誘導因子(実験的メカニカルストレス, IL-1β)刺激下の軟骨細胞活性 [評価項目: anabolic activity (プロテオグリカン、II型コラーゲン産生能)、catabolic activity(軟骨基質分解酵素MMPs、アポトーシス)] を解析して、DNA修復およびエネルギー代謝の調節因子・機構のストレス応答および防御的役割を検証する。 得られた結果から、これら調節機構のうち軟骨細胞の活性を修飾(anabolic activityの促進, catabolic activityの抑制)し、軟骨変性を抑制しうる因子を見つけ、軟骨変性抑制法の開発に発展させる。
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