研究課題/領域番号 |
17K11047
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
渡邊 泰秀 浜松医科大学, 医学部, 教授 (50305380)
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研究分担者 |
服部 裕一 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 教授 (50156361)
松田 直之 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (50332466)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | sepsis / heart / Na/Ca exchanger (NCX) / patch clamp |
研究実績の概要 |
敗血症性ショックは,体末梢血管抵抗低下および心筋収縮性低下を主体として急性循環不全をきたす病態である。初期は末梢循環の維持された“warm shock”となりやすいが,血管内皮傷害と並行して“cold shock”へ移行し,心機能低下が具現化しやすい。 このような心機能低下の機序を,心筋細胞内Ca2+動態とCa2+調節膜タンパク質の変化を解析することを目的とする。盲腸結紮穿孔敗血症マウスモデルを用いて,敗血症性ショック病態の初期から後期に渡る心筋Ca2+動態を解析し,Ca2+調節膜タンパク質,特にNa+-Ca2+交換系の解析により,敗血症性ショックにおける心病態学を明らかとし,敗血症病態における心筋細胞傷害に関する見識をまとめることを研究目的とした。 2017年~2018年度NCXのKOマウスを作製に試みたが、今までの報告とは異なり、ホモNCXKOマウスが生存したためにNCXKOマウスの作成を断念した。 敗血症治療薬は、今だ見出されていない。敗血症になるとNCX機能が落ちるという報告がされている。そこで我々はNCX機能を促進する薬物に焦点を当てた。2019年度までに、我々は数種のNCX促進薬を見出した。2019年3月に高血圧薬でしかもATP感受性Kチャネル開口薬ピナシジルが、NCX電流を促NO、cGMP,PKGの情報伝達経路を介して促進し、さらにピナシジルが直接NO産生作用を示すことを見出し、ドイツの薬理学雑誌(Naunyn Shmiedeberg’s Arch Pharmacol)に採択された。さらに、今までに見出してきた狭心症治療薬ニコランジル、高血圧治療薬ピナシジル、抗不整脈薬フィレカイニド、心筋保護薬であるSNP、シルデナフィルの特徴をまとめ、Journal of Physiological Scienceに総説として投稿し2019年10月に採択された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
敗血盲腸結紮穿孔敗血症マウスモデルを用いて,敗血症性ショック病態の初期から後期に渡る心筋Ca2+動態を解析し,Ca2+調節膜タンパク質,特にNa+-Ca2+交換系の解析により,敗血症性ショックにおける心病態学を明らかとし,敗血症病態における心筋細胞傷害症病態における心筋細胞傷害とNCXとの関係を検討する。麻酔下で左臍下に約5 mmの切開を行い,虫垂を膨出した後,虫垂の先端に糞便を充満させ,先端約5 mmを結紮し,23G針で2箇所に穿孔を加える。対照群は腹膜切開と虫垂先端の膨出のみを行ったものとする。虫垂を腹腔内に戻した後,皮膚切開部を縫合する。研究対象は,対照群,敗血症3時間群,敗血症6時間群,敗血症10時間群,敗血症24時間,および敗血症48時間とし,摘出心臓を用いて研究を進める。コラゲナーゼを用いて単離心室筋細胞を作製し、パッチクランプ法を用いてNCX電流を採取する。すべてのステージで対照群と比べNCX電流密度が低下していた。中でも敗血症6時間のNCX電流密度が低いことを見出した。 本来、この研究は昨年度の終了する予定であったが、介護していた母親が亡くなり、うつ状態になり2019年度は論文作成を主に行った。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、昨年度作成した敗血症マウスモデルの各々のステージに、これまでに研究してきたNCX促進薬を投与して、NCX電流密度をパッチクランプ法で採取し、その効果を検討する。 また、マウスの種を変え、再度NCXノックアウトマウスを作製を試みる。NCXヘテロノックアウトマウスの敗血症マウスモデルを作成し、対照群,敗血症3時間群,敗血症6時間群,敗血症10時間群,敗血症24時間,および敗血症48時間の単離心室筋細胞を作製し、パッチクランプ法を用いてNCX電流を採取しその効果を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験に遅れが生じたため、実験動物、試薬、パッチクランプ消耗品、学会発表経費等使用予定です。
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