研究課題
1980年頃より,短時間の虚血がその後の虚血に対する耐性を獲得するという,いわゆる虚血耐性獲得現象が報告された.これに伴い,吸入麻酔薬には,薬理学的にこの虚血耐性獲得現象に値する作用があるのではないか,という研究されている.主な作用機序としては,吸入麻酔薬によるATP感受性カリウムチャネル開口やプロテインキナーゼCなどを含む内因性の情報伝達経路の活性化が起こるものと言われて,すでに心臓においては吸入麻酔薬(セボフルランなど)によって心筋梗塞巣の減少や心筋代謝の維持などが報告されている.私たちは 脳神経における効果検討を行った.中枢神経系には,活動電位の伝達を行う神経細胞(Neuron)が存在しているが,この中枢神経を構成する細胞の約90%はグリア細胞である.当初,グリア細胞は不活性で周辺組織の恒常性を維持するような比較的静的な役割を演じることでシグナル伝達に貢献すると考えられてきたが,近年になって多種多様な神経伝達物質の受容体が発現していることなどから,これまで神経細胞のみが担うとされてきたシグナル伝達などの動的な役割も果たしていることが,次々に示されてきている.そこで,今回は吸入麻酔薬や乳酸の障害や中枢神経経系への影響を検討した.このように虚血時には,酸素およびグルコースからATPを産生するのであるが,ATP枯渇,すなわちニューロンが低酸素状態などでエネルギー産生が困難になった場合,血液由来のグルコースからATPを産生しようとするが,これ以外に最近,グリア由来の乳酸を用いてエネルギー活動に利用する経路が明らかになってきた.
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臨床麻酔
巻: - ページ: 295-306
Eur .J Neurosci
巻: - ページ: 1-11
Technical Tips
巻: - ページ: 415-419