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2019 年度 実施状況報告書

麻酔薬によるKv1.3チャネルを介した免疫抑制作用の機序解明と予後改善戦略

研究課題

研究課題/領域番号 17K11067
研究機関東北大学

研究代表者

外山 裕章  東北大学, 医学系研究科, 講師 (00375007)

研究分担者 風間 逸郎  東北大学, 医学系研究科, 大学院非常勤講師 (60593978)
研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2021-03-31
キーワード片側尿管閉塞モデル / Kv1.3チャネル / マルガトキシン / 慢性腎不全 / 腎線維化
研究実績の概要

片側尿管閉塞(Unilateral Ureteral obstruction: UUO)モデルは腎臓の糸球体に病変を発生させずに腎臓の間質の線維化を発生させる。 ラットにおいて閉塞後1~3週の各週で比較した所では、対側のUUOを行っていない正常腎をコントロールとして組織学的な比較検討を行った場合、尿管の閉塞期間が長くなればなるほど、腎臓間質におけるTリンパ球とマクロファージの増加を認めた。しかし、Kv1.3-channelの選択的阻害薬であるマルガトキシンを連日、200nM/mL腹腔内投与に投与する治療を行ったラットでは、腎の免疫組織染色標本における腎皮質の間質において線維化マーカーの発現が減少することを認めた。マルガトキシンが腎皮質の間質におけるリンパ球の浸潤と間質の線維化を抑制されることが示された。さらにこれら組織像では、マルガトキシンで治療したラットでは顕著な白血球数の減少と白血球増殖の抑制も認められた。本研究におけるマルガトキシンの投与量は慢性腎不全モデルにおける腎間質線維化を抑制するマルガトキシン投与量の倍量ではあったが、マルガトキシンにより、UUOモデルにおいても腎間質線維化の抑制を生じることから、リンパ球におけるKv1.3-channelの過剰発現が、白血球の増殖に強く関与しており、さらに腎間質の線維化にも強く関与していると考えられた。これらの結果から、リンパ球膜表面のKv1.3-channelを標的とした治療により腎間質の線維化を抑制できると考えられ、慢性腎不全への進行を抑制する今後の治療薬開発への一助となる考えられた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

初期実験モデルのマルガトキシン投与量では、リンパ球・マクロファージ浸 潤に対する抑制作用が小さいため、マルガトキシンの投与量を更に増加させたモデルを新たに作成し、検証が完了した。マルガトキシンにより腎線維化が早期に且つ強く抑制されることが示された。免疫染色によるKv1.3-channel、CD3、 ED-1、Ki-67、Collagen-III、α-SMAの発現量の検討、リアルタイムPCR法による検討と免疫組織染色による評価は完了しており、ウェスタンブロットによるKv1.3-channel、CD3、ED-1、Ki-67 Collagen-III、α-SMAの組織内発現量の定量が進行中である。種々の麻酔関連薬剤(揮発性麻酔薬、麻薬、静脈麻酔薬)がリンパ球細胞膜表面のKv1.3-channelにマルガトキシンと同様に抑制作用を発現するかを今後検討していく予定である。

今後の研究の推進方策

マルガトキシンの投与量決定と、UUOモデルの閉塞後の時間経過と慢性腎不全の進行の病態把握に時間を要したが、今後、種々の麻酔関連薬剤の中で静脈麻酔薬から、リンパ球細胞膜表面のKv1.3-channelにどの様に作用するかを検討する予定である。マウスより胸腺を摘出し、単離したリンパ球浮遊液にプロポフォールを暴露し、パッチクランプ法を用いてリンパ球細胞膜表面Kv1.3-channelの電流の変化を計測する予定である。その後、オピオイドと揮発性麻酔薬について検討する予定である。Kv1.3-channel抑制作用のある麻酔関連薬につい て、UUOモデルラット作成時に暴露もしくは術後投与する方法により、腎のリンパ球浸潤と線維化を評価し、麻酔関連薬剤の腎保護作用と免疫抑制作用へのリンパ球細胞膜表面Kv1.3-channelの役割を明らかにする。

次年度使用額が生じた理由

マウス胸腺を摘出して得られたリンパ球浮遊液へのマルガトキシン投与により生じる、リンパ球細胞膜表面のKv1.3-channelの抑制効果と同様の結果が、麻酔関連薬剤(揮発性麻酔薬、オピオイド、静脈麻酔薬)のリンパ球浮遊液への投与により生じるかを、パッチクランプ法を用いてリンパ球細胞膜表面Kv1.3-channelの電流の変化を計測することで行う。また、UUOモデルに麻酔関連薬を投与した場合の腎皮質の状態をマルガトキシン投与群と比較検討する。時間的に可能であれば、片側腎動静脈閉塞による腎虚血再灌流モデルラット作成時に種々の麻酔薬を暴露した後、腎のリンパ球浸潤と線維化を評価し、麻酔関連薬剤の腎保護作用と免疫抑制作用へのリンパ球細胞膜表面Kv1.3-channelの役割を明らかにする。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2019

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件)

  • [雑誌論文] Delayed Rectifier K+-Channel Is a Novel Therapeutic Target for Interstitial Renal Fibrosis in Rats with Unilateral Ureteral Obstruction2019

    • 著者名/発表者名
      Abe Nozomu、Toyama Hiroaki、Saito Kazutomo、Ejima Yutaka、Yamauchi Masanori、Mushiake Hajime、Kazama Itsuro
    • 雑誌名

      BioMed Research International

      巻: 2019 ページ: 1~11

    • DOI

      https://doi.org/10.1155/2019/7567638

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Second-Generation Histamine H1 Receptor Antagonists Suppress Delayed Rectifier K+-Channel Currents in Murine Thymocytes2019

    • 著者名/発表者名
      Saito Kazutomo、Abe Nozomu、Toyama Hiroaki、Ejima Yutaka、Yamauchi Masanori、Mushiake Hajime、Kazama Itsuro
    • 雑誌名

      BioMed Research International

      巻: 2019 ページ: 1~12

    • DOI

      https://doi.org/10.1155/2019/6261951

URL: 

公開日: 2021-01-27  

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