研究課題/領域番号 |
17K11068
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
山下 創一郎 筑波大学, 医学医療系, 講師 (10455933)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 術後高次機能障害 / 高齢 / 海馬 / 樹状突起 / グリコーゲン合成酵素キナーゼ3 / Morris water maze |
研究実績の概要 |
加齢ラットを用いて、GSK-3β阻害薬であるtideglusibを投与すると腹部手術後の学習・記憶障害が軽減するかという実験を行っている。15か月ラットを、腹部手術群、腹部手術+薬物投与群、薬物投与のみ群、コントロール群の4群に分け、腹部手術群では開腹手術を行い、腹部手術+薬物投与群ではtideglusib 5mg/kgを手術前日に腹腔内投与した後に開腹手術を行った。薬物投与のみ群は、腹部手術+ 薬物投与群と同じ時系列でtideglusib 5mg/kgの腹腔内投与のみを行った。 前年度は、術後3日目からMorris water maze(5日間のtraining phaseの翌日にprobe trial)を施行し学習・記憶障害を測定した。probe trialにおけるプラットフォームが置いてあった区域を探索した時間の割合は、腹部手術群がコントロール群より有意に低く、腹部手術+薬物投与群が腹部手術群と薬物投与のみ群より有意に高かった。以上から、術前のtideglusibの投与が手術による学習・記憶障害を予防する効果があることが示された。 今年度は、腹部手術3日後(tideglusib投与群では投与4日後)に摘出した脳から作成した海馬のタンパク抽出液を用いて、それぞれの群のGSK-3βとGSK-3βのリン酸化を測定したところ、total-GSK-3βは群間に差はなかったが、腹部手術+薬物投与群がコントロール群と薬物投与のみ群に比べてphospho-GSK-3βレベルが高かった。これは、行動試験において腹部手術+薬物投与群がもっとも学習・記憶能力が高かったことに一致している。しかし、腹部手術のみ群のphospho-GSK-3βレベルはコントロール群と差がなく、行動試験における結果と一致しなかった。この結果から、tideglusibの術前投与による学習・記憶障害予防効果はGSK-3βのリン酸化レベルによる可能性が高いことが示唆されたが、他の因子も関与していることが考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度の新型コロナウイルスの蔓延により、学内での活動が制限され、解析キットの輸入も遅れたことから研究の進捗が滞ってしまった。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、行動試験後に採取した脳のGolgi染色の結果を解析し、神経細胞の樹状突起が腹部手術やtideglusib投与によってどのように変化するのかを調べる予定である。 しかし、行動試験の結果とGSK-3βのリン酸化の結果に一致しない部分もあり、腹部手術後の学習・学習記憶障害に対するGSK-3β阻害薬の予防効果については別の機序を考える必要もあると考えている。それについては検討を行い、必要であればタンパクの発現など追加実験を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの蔓延により、解析キットの輸入が遅れたため。次年度は解析キットを購入する予定。
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