今や命は助かったが歩行ができないとか、箸が持てないという救急医療は望まれていない。そこで、この機能回復を行うのが外傷再建医療であり、この分野で徐放薬の研究が生かせないかという着想のもと、会津中央病院外傷再建センター(福島県立医科大学外傷再建学講座)に赴任し日本で最初の外傷センター専属麻酔科医になり、外傷再建医療の臨床及び研究を行った。徐放薬を用いて全身状態の悪い患者でも安全に確実に麻酔を行えれば、機能回復が難しい高齢者外傷でも、外傷超急性期から手術が可能となり命だけでなく日常生活の復帰まで望める。また、術後も成長因子(増殖因子)を局所で同時に徐放できれば軟部組織の再生や骨癒合などを促進し、鎮痛とともに早期離床やリハビリによる機能回復にさらに貢献できると考えた。 そこで新たな局所麻酔徐放薬・成長因子徐放薬の作成に関し、新たなイオン化を試み徐放試験を繰り返した。今後動物実験を行う予定である。リドカイン徐放シートに関しては熱傷で、さらにリドカイン徐放性人工骨も作成し、外傷手術に応用し臨床試験を行って有効性と安全性の確認を現在進行中である。新規にはロピバカインを用いた注射可能な徐放薬が試作され、こちらを用いた動物実験に着手した。しかし、以前のようにヒトに用いる際には倫理委員会の審査基準や、薬剤作成行程の基準が著しく上がっているため現状の研究室での作成では難しく、そのあたりが今後の臨床試験の課題になってくる。製薬会社との共同研究も模索しつつ、研究環境の改善を行っていきたい。 同時に整形外科医との共同研究にも携わり、「高齢者大腿骨近位部骨折患者における手術前後の吸入療法の有効性…」につき、骨折治療学会で発表を行った。
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