研究課題/領域番号 |
17K11072
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
張 京浩 帝京大学, 医学部, 教授 (50302708)
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研究分担者 |
山田 芳嗣 国際医療福祉大学, 国際医療福祉大学三田病院, 教授 (30166748) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ARDS / 炎症性サイトカイン / アポトーシス / デキサメサゾン / スタチン / JNK / AKT |
研究実績の概要 |
2018年度までに、急性呼吸促迫症候群(ARDS)をシュミレートしたin vitroモデルを構築し、その系での細胞傷害性を軽減するキー分子として、JNKとAktが重要であることを明らかにできた。すなわち、炎症性サイトカインの関与する肺障害においては、少なくとも部分的にはJNKの活性化によるアポトーシス経路が関与し、さらにその細胞障害性の軽減にはステロイドを含めた抗炎症薬の組み合わせ投与が奏効し、JNKそのものの活性抑制と、別途Aktの活性化によるsurvival経路の賦活が重要である知見を得て、まずはその成果を論文として発表した。2019年度以降は、その系を用いて、主要な課題であるスタチンの前投与の効果を検証したが、結果として、スタチンはその種類によらず細胞障害性を増幅するのみで、水溶性/脂溶性の違いによる生物学的効果の違いを見出すことはできなかった。 2020年度以降は、臨床現場における新型コロナ肺炎患者の対応にエフォートの大半を費やす事態にも至り、結果的に基礎的実験を通じてのさらなる知見の発展には至らなかった。ただし、スタチンとARDSとの関係については、他の研究者から、より炎症所見の強いARDSでスタチン(simvastatin)の有効性を示唆する臨床データの報告もなされたものの、臨床での注目度においては、特にCOVID-19肺炎のパンデミック以降はステロイドにその座を明け渡したと言える。実際、本研究過程を経て、新型コロナ肺炎も含めたARDSにおいてステロイドに代表される抗炎症薬が奏効する作用機序を提示できたので、本課題においては一定の成果を示せたものと考える。2022年度には上記基礎的実験結果を自施設での重症新型コロナ肺炎患者の臨床データと統合することで、ARDSに抗炎症薬の組み合わせが奏効するメカニズムを学会シンポジウム及び総説として発表した。
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