研究課題/領域番号 |
17K11075
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
丸山 一男 三重大学, 医学系研究科, 教授 (20181828)
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研究分担者 |
澤田 博文 三重大学, 医学系研究科, 講師 (30362354)
張 尓泉 三重大学, 医学系研究科, 助教 (30456727)
丸山 淳子 鈴鹿医療科学大学, 医用工学部, 教授 (50263017)
三谷 義英 三重大学, 医学部附属病院, 准教授 (60273380)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 肺高血圧 / イオンチャネル |
研究実績の概要 |
TRPVチャネルは、Ca選択性の比較的高い、非選択性の陽イオンチャネルである。機械刺激により開口し、陽イオンを細胞内に入れるという点では、圧や流れに反応して開口する性質があると考えると、血液が流れている血管に存在し、血管内皮細胞や血管平滑筋細胞で役割を持つ可能性がある。肺高血圧では、①肺血管平滑筋の過収縮という機能的異常、②肺血管平滑筋の肥大・増殖による中膜の肥厚、③本来血管平滑筋を持たない末梢肺動脈での血管平滑筋の出現、④内膜の線維性・細胞性肥厚、⑤血管壁結合組織の増加が発生する。①による肺動脈圧の上昇という機械的刺激は、続発的に②③の器質的変化原因となる。そこで、TRPVチャネルの活性化により肺動脈圧が上昇し、肺高血圧血管病変が発生する可能性がある。肺高血圧動物モデルとして、慢性低酸素曝露肺高血圧モデル、モノクロタリン誘起肺高血圧モデルがある。さらに、BMP2Rの遺伝子変異を持つラットで、モノクロタリンや慢性低酸素曝露による肺高血圧が増強する可能性が研究されつつある。昨年の研究では、7週齢のSDラットに血管内皮細胞増殖因子(VEGF)受容体阻害薬SU5416(20mg/kg,Cayman)を用いたSugen 肺高血圧ラットの摘出肺動脈では、TRPV4刺激は、正常に比し、血管収縮が亢進していたので、TRPV4と肺高血圧には、関係があることが強く示唆された。本年は、モノクロタリンモデルの肺組織でのTRPV4mRNAの経時的変化を、対照、MCT投与3,7,16、21日後に検討したところ、mRNAの発現を確かに認めたが、経時的な増強は認められなかった。BMP2R遺伝子改変ラットの肺組織でTRPV4mRNAの発現亢進を予測していたが、Wildタイプとに差を認めることはできなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、肺高血圧に介在するメディエーターを解明し、TRPV4との関係を明らかにすることであるが、慢性低酸素曝露肺高血圧モデル、モノクロタリン誘起肺高血圧モデルでは、eNOS, iNOS, phosphorylated eNOS, AKT, phosphorylated AKTの動態が明らかに異なることを確認し、肺高血圧モデル間の違いが明瞭となってきた。一方、肺高血圧でTRPV4の発現亢進を予測しているが、現時点は証明できていない。一方、肺高血圧ラットの摘出肺血管では、TRPV4刺激薬で血管収縮が亢進していることは、おそらく確実である。
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今後の研究の推進方策 |
実験方法は確立しているので、肺高血圧の発症におけるモデル間における薬剤反応の差をTRPV4以外の薬物でも調べる。候補として、サイクリックAMP増加と抗炎症作用を持つ物質について検討する。肺動脈圧、右心室肥大、肺血管の中膜肥厚、末梢肺動脈での筋性血管出現率、肺組織でのeNOS, iNOS, phosphorylated eNOS, AKT, phosphorylated AKT、IκB,HMGB1 等をmRNAレベル、蛋白レベルで解析し、同物質による影響を明らかにすし、肺高血圧治療における標的物質による効果のモデル差の原因を考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
薬剤の備蓄が存在したため、当該年度の使用が減額されたため、次年度使用額が発生した。使用計画としては、次年度に薬剤を購入する。
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