敗血症の際に、脊髄にサイトカインをはじめとする炎症性メディエーターがどのように誘導されるかを分子生物学的に解析する。またこれらの炎症反応が脊髄に生じうる形態変化を評価することを目的とし、敗血症モデルマウス(LPS腹腔内投与マウス、および盲腸結紮モデル)を作製した。いずれのモデルにおいても敗血症誘導後速やかに脊髄組織全長にわたって炎症性サイトカイン(IL-1β、IL-6、TNF-α)の転写レベルでの高度の誘導が確認できた。また組織像においては。注目すべきことに、炎症性サイトカインの誘導はあるものの、炎症性細胞の浸潤は全く認められず、一方で、組織の著明な浮腫像、そして神経細胞死が認められた。これらの所見から炎症性サイトカインはもともと中枢神経にあった細胞とくにミクログリアが誘導している可能性が示唆され、同細胞の抑制薬であるミノマイシンを投与したところ、炎症性サイトカイン誘導は有意に減少した。また同細胞の特異抗体であるIba-1で免疫組織染色を行ったところ、敗血症モデルマウスでは有意に脊髄にIba-1シグナルの増強を認めたことから、敗血症時には、脊髄内のミクログリアが活性化し、これにより脊髄内に炎症が惹起されることを示した。今後はこれら誘導された炎症がどのように脊髄機能に影響するかを検討する予定である。一方盲腸結紮モデルでは炎症性サイトカイン誘導は確認できたものの、致死率が高いことから、より長期間の観察には不向きであった。
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