研究課題/領域番号 |
17K11082
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
川人 伸次 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学系), 特任教授 (60284296)
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研究分担者 |
木下 浩之 愛知医科大学, 公私立大学の部局等, 客員研究員 (70291490)
北畑 洋 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学系), 教授 (60161486)
高石 和美 徳島大学, 病院, 講師 (20325286)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | トランスレーショナルリサーチ / 周術期管理 / 細胞骨格 |
研究実績の概要 |
細胞骨格F-アクチンの構成は、small GTPase-細胞骨格ターンオーバー調節物質制御経路およびPI3K-Akt-mTOR経路と、ミオシンフィラメントとの連関による平滑筋収縮経路という3経路の連関で制御を受ける。本研究では、ヒト腎動脈でこれら3経路の連関とその機序を検証し、発生機序が様々な血管でのストレス反応をユニバーサルに軽減するF-アクチン構成制御を指向した新たな心血管疾患治療戦略を提案する。また、それに及ぼす臨床使用濃度の麻酔薬作用を明らかにする。さらに、摘出ヒト腎動脈のアクチン制御3経路の変化と片腎での患者予後の関連や、術前心血管合併症の種類や程度、治療薬の有無あるいは麻酔薬選択を含む周術期管理の違いが周術期急性腎障害発生頻度や程度に影響を与えるかを調べるトランスレーショナルリサーチを行う。 本年度は培養ヒト平滑筋細胞を用いた予備実験と来年度からの臨床研究(ヒト組織の採取)に関する準備(本学所定の倫理委員会申請等)を行った。F-アクチン構成抑制系調節物質コフィリンには、3種サブタイプが存在する。我々は、コフィリン-2に注目しているが、その他の物質の関与も否定できない。そこで、培養ヒト平滑筋細胞で、すでに我々が明らかにしているPI3K-Akt-mTOR経路を介し酸化ストレスを発生させると同時にF-アクチン構成を増強する高濃度ブドウ糖負荷で、まず、コフィリン-1、コフィリン-2、ADFおよびコルタクチンの活性を評価した。 本年度はこれらの手法を習得し、実験ノウハウを確立した。また、倫理委員会の承認を得て、対象患者摘出腎の腎被膜動脈を用いた分子薬理学的検討の準備が整った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本年度は、外径100 μm、長さ5 mm程度の微小腎動脈標本を作成し、DMT社製プレッシャーミオグラフシステム114PCに懸垂して実験する微小腎動脈イメージングまで予定していた。この微小血管懸垂には技術を要すると考えられ、ヒト微小血管を使用する前に、ラット腸間膜動脈の同サイズの微小血管で予備実験を行い、技術の習得を加速してからヒト血管を用いる予定であった。しかし、本年度は予算不足によりプレッシャーミオグラフシステムが購入できなかったため、研究内容を変更した。途中からの変更のため研究の進行に若干の遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、腎微小動脈イメージングと分子薬理学的検討を行う予定である。 腎微小動脈イメージングに関しては、プレッシャーミオグラフシステムの附属ソフトウエアで、血管径を画像データから数値化する。本システムでは、血管内圧上昇に伴う生理的収縮 (マイオジェニックトーヌス) をコンピュータ制御で評価できる。酸化ストレスと同時にF-アクチン構成を増強する高濃度ブドウ糖を60分間負荷し、正常、高濃度ブドウ糖群で以下のパラメータ変化を患者病態別に比較検討する。a) 10-60 mmHgまでの生理的マイオジェニックトーヌス収縮反応;b) 60 mmHgトーヌス発生血管でのブラジキニン、一酸化窒素ドナーNOC-7に対する内皮依存、非依存血管拡張反応;c) a)およびb)の反応に及ぼすF-アクチン構成阻害薬サイトカラシンD、small GTPase rac-1あるいはRho A阻害薬rac1 inhibitor、Rho inhibitor 1、PI3K阻害薬LY294002、活性酸素阻害薬Tiron、NADPHオキシダーゼ抑制薬gp91-ds-tatの影響、などである。 分子薬理学的検討に関しては、ヒト腎動脈で以下を行う。すなわち、a) ウエスタンブロッティング;b) 共免疫沈降法;c) small GTPase活性アッセイ;d) 免疫組織染色、などである。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度はプレッシャーミオグラフシステム等が購入できなかったため、培養ヒト平滑筋細胞を用いた予備実験の後、臨床研究の準備など他の研究を先行した。予算の残金は次年度使用とした。来年度は予算を合算し新規設備備品購入、実験動物・試薬類などの消耗品費と研究成果発表のための旅費等に使用する予定である。
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