研究課題/領域番号 |
17K11087
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
北野 敬明 大分大学, 医学部, 教授 (20211196)
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研究分担者 |
新宮 千尋 大分大学, 医学部, 准教授 (30295191)
徳丸 治 大分大学, 福祉健康科学部, 教授 (40360151)
松本 重清 大分大学, 医学部, 准教授 (90274761)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 抗酸化能 / スピン解析 / Dexmedetomidine / 虚血再灌流傷害 / フリーラジカル / 核磁気共鳴法 / 電子スピン共鳴法 / 質量分析イメージング |
研究実績の概要 |
術後認知機能障害の発症機序として,以前より指摘されている神経炎症だけではなく,酸化ストレスが大きく関与していることが基礎および臨床研究にて確認されている。集中治療室にて周術期の鎮静に使用されている鎮静剤Dexmedetomidineは,術後認知機能障害を予防することが臨床研究にて報告されているが,興味深いことにDexmedetomidineが抗酸化作用を有することを示す基礎研究もある。よって,我々はDexmedetomidineの抗酸化作用が術後認知機能障害の予防に関与した可能性があると推測しているが,その詳細は不明である。本研究は,Dexmedetomidineの周術期酸化ストレス,特に脳障害に対する保護効果を,スピン共鳴解析,すなわち高時間分解能を有する核磁気共鳴法(NMR)および電子スピン共鳴法(ESR)を用いて,脳のエネルギー代謝および抗酸化作用の観点から,明らかにすることを目的とする。 1年目は,リンを観測核とする核磁気共鳴法(NMR)による脳エネルギー代謝の解析を実施する予定であったが,当初使用する予定だったNMR分光器の故障のため,これを行うことができなかった。そこで以下の代替実験を検討中である。 (1)本学内に設置されている別のNMR分光器を用いて,脳組織の1H-NMRメタボロミクスを行う。Dexmedetomidine添加の有無による組織中の代謝物の差異を比較する。 (2)本学内に設置されている飛行時間型質量分析装置を用いて,マウス脳組織の質量分析イメージングを行い,脳エネルギー代謝を可視化する。Dexmedetomidine添加の有無によるエネルギー代謝の差異を比較する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
1年目には,リンを観測核とするNMRを用いて,脳スライスの灌流標本中の高エネルギーリン酸(ATP,クレアチンリン酸)を測定し脳エネルギー代謝の解析を実施する予定であった。しかし,使用予定であった灌流実験用のNMR分光器が故障したため,これを十分に行うことができなかった。このため,本研究課題の進捗は大幅に遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
脳組織灌流標本のNMRによる解析に代えて,脳組織の1H-NMRメタボロミクス解析を行う。本学工学部に別のNMR分光器が設置され,学内研究者に開放されているが,マグネット内で組織の灌流を行うことは認められていない。そこで,当初計画した灌流実験に代えて,脳組織の1H-NMRメタボロミクスの手法によりDexmedetomidine添加の有無による組織中の代謝物の違いを比較する。 また,脳組織灌流標本のNMRによる解析の第二の代替として,虚血再灌流負荷に伴うエネルギー状態の変化を質量分析イメージングにより明らかにする。脳組織内の高エネルギーリン酸(ATP,ADP,AMP)を脳の部位毎に定量し,Dexmedetomidine添加の有無によるエネルギー状態の違いを比較する。 電子スピン共鳴法によるDexmedetomidineのフリーラジカル消去能の網羅的解析は,当初計画通り2年目に実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
1年目に使用する予定であった核磁気共鳴装置(NMR)が故障した。そのため,本研究課題の進捗は大幅に遅れており,購入する予定であった試薬や消耗品相当額や学会参加費等が使用されずに残った。 次年度には,代替計画のNMRメタボロミクスや質量分析イメージングを実施するため必要な試薬や消耗品の購入費として使用する。 また,2年目の研究費については,電子スピン共鳴法によるDexmedetomidineのフリーラジカル消去能の網羅的解析を当初の計画通りに実施して使用する見込みである。
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