研究課題/領域番号 |
17K11087
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
北野 敬明 大分大学, 医学部, 教授 (20211196)
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研究分担者 |
新宮 千尋 大分大学, 医学部, 准教授 (30295191)
徳丸 治 大分大学, 福祉健康科学部, 教授 (40360151)
松本 重清 大分大学, 医学部, 准教授 (90274761)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | Dexmedetomidine / 抗酸化能 / フリーラジカル / 虚血再灌流傷害 / 電子スピン共鳴法 / スピン解析 |
研究実績の概要 |
術後認知機能障害(POCD)の発症に酸化ストレスが大きく関与していることが基礎および臨床研究にて確認されている。周術期の鎮静に使用されるα2作動性鎮静剤Dexmedetomidine(DEX)がPOCDを予防することが臨床研究にて報告されているが,興味深いことにDEXが抗酸化作用を有することを示す基礎研究もある。我々はDXMの抗酸化作用がPOCDの予防に関与する可能性があると推測しているが,その詳細は不明である。 2年目は,試験管内で種々のフリーラジカルを発生させた反応液中に種々の濃度のDEXを添加し,電子スピン共鳴法(ESR)を用いてDEXの直接的フリーラジカル消去作用を評価した。各フリーラジカルの濃度-反応曲線からIC50を求め,DEXとフリーラジカルの反応速度定数kを推定した。DEXは以下のフリーラジカルに対して濃度依存的な消去作用を示した(IC50,k);ヒドロキシルラジカル(2.2±0.4 mM,>10^9 M-1s-1),スーパーオキサイドアニオン(17±8 mM,0.94 M-1s-1), t-ブトキシルラジカル(0.96±0.10 mM,1.0×kCYPMPO),一重項酸素(0.15±0.01 mM,6.0×10^6 M-1s-1),アスコルビルフリーラジカル(36±1 μM,-)。しかし,t-ブチルペルオキシルラジカル,一酸化窒素,DPPHに対しては消去能を示さなかった。 DEXは生体内で最も強い酸化能をもつとされるヒドロキシルラジカルや,虚血再灌流傷害の際に活性化されるヒポキサンチン-キサンチンオキシダーゼ系で産生されるスーパーオキサイドアニオンを直接消去することによって抗酸化能を示し, POCDを防止する効果をもつと可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2年目にDEXのもつフリーラジカルに対する直接的消去作用の評価を行うことができた。DEXのもつ抗酸化能の機序の一つとして,ヒドロキシルラジカルやスーパーオキサイドアニオンを含む複数の酸素中心フリーラジカルに対する直接的消去作用の可能性を示すことができた。このため,2年目の研究計画は概ね予定通り達成できた。
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今後の研究の推進方策 |
2年目の実験においてDEXが直接的消去作用を示したフリーラジカルに培養細胞をばく露し,酸化ストレスに対する細胞のviabilityを評価する。種々の濃度で培養液中にDEXを添加し,フリーラジカルによる酸化ストレスに対するDEXの抗酸化能をin vitroで評価する。 1年目に実施予定であった脳組織灌流標本のNMRによる解析に代えて, in vivo虚血再灌流負荷に伴うエネルギー状態の変化を質量分析イメージングにより明らかにする。脳組織内の高エネルギーリン酸(ATP,ADP,AMP)を脳の部位毎に定量し,DEX添加の有無によるエネルギー状態の比較を試みる。なお,1年目終了時に代替実験として検討していた脳組織の1H-NMRメタボロミクス解析は実施しない。
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次年度使用額が生じた理由 |
測定機器の不具合により1年目に当初計画していた実験を行うことができなかった。2年目はほぼ計画通りに実施したが,本来1年目に使用する予定であった額に相当する分と2年目の余剰分が,次年度に繰り越しとなった。3年目は,培養細胞を用いたin vitroでのdexの抗酸化能の評価と,質量分析イメージングによるin vivoでの抗酸化能や虚血再灌流負荷に対する脳保護効果の評価を行い,配分額を使い切る見込みである。
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