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2017 年度 実施状況報告書

術後認知機能障害および術後せん妄に対する周術期抗酸化戦略の確立

研究課題

研究課題/領域番号 17K11088
研究機関大分大学

研究代表者

松本 重清  大分大学, 医学部, 准教授 (90274761)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワード周術期せん妄 / 酸化ストレス / ビタミンC / 電子スピン共鳴
研究実績の概要

2013年9月1日から2014年8月31日までの1年間で、心臓大血管術後に当院ICUに入室した311例のうち、術後せん妄(POD)を認めたのは56例で、その発症率は18%と高率であった。このようにPODは高度侵襲手術で高頻度に発症し、予後悪化や死亡率増加をもたらすため、その予防戦略を確立することは重要である。
我々は、POD発症機序として過剰な活性酸素種の産生、すなわち、酸化ストレスに注目し、「周術期における酸化ストレスと術後せん妄との関連(大分大学倫理委員会承認番号: 1255、UMIN試験ID: 000028423)」という臨床研究を計画した。
過剰な酸化ストレスに対して生体内で最もダイナミックに反応する抗酸化物質はビタミンCであり、我々は手術室内に設置した電子スピン共鳴装置にてリアルタイムでビタミンCを測定できる(J Trauma, 2010)。手術患者は術前から種々の酸化ストレスと関連のある合併症(動脈硬化、腎疾患、糖尿病など)を有し、過剰な活性酸素種が産生されている。さらに術後は虚血再灌流や全身性炎症反応も加わることにより、さらに活性酸素種が過剰となり、酸化ストレスは助長され、ビタミンCが著減することがPODの発症機序に関与しているのではないかと推定している。
今年度は、まず、研究同意の得られた、待機的心臓血管外科手術患者で、経時的(麻酔導入直前、人工心肺離脱直後、ICU入室直後、以後、ICU入室中は1日毎)に採血し、ビタミンC、各種酸化ストレスマーカー、炎症マーカーを測定し、POD発症との関連を調べた。さらに、ビタミンCが術前から低下していた群、術前・術後ともに正常範囲で推移した群、術前が正常で術後に低下した群の3群に分けてPODの発症率との関連を比較検討した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

臨床研究の同意が得られ、周術期に経時的に採血を行った症例は133名である。血液の測定項目は、抗酸化物質の指標として、ビタミンC濃度を示すVCR/DMSO(J Trauma, 2010)とチオレドキシンを測定した。また、酸化の指標として、一酸化窒素を測定し、さらにマロンジアルデヒドや各種炎症マーカーも今後測定する。現在、ビタミンCや酸化ストレスマーカーとPODの関係を評価している。それ以外の評価項目としては、術中の各種データ(麻酔時間、手術時間、出血量、尿量、輸液・輸血量など)、術後ルーチンに行う血液生化学検査、術後合併症(新規心房細動、術後出血量、腎不全など)、その他(ICU滞在期間、入院期間、院内死亡など)と多岐に渡る。最終的にはこれら全てのパラメーターとPODとの関連を多変量解析にて調べる予定である。

今後の研究の推進方策

POD発症率、その他の酸化ストレスマーカー(血漿マロンジアルデヒド(MDA)、8-OHdG)や炎症反応マーカー(TNF-α、IL-1β、IL-6、IL-10など)、手術侵襲度を3群間で比較検討することにより、高度侵襲手術でPODが発症しやすく、また、術前ビタミンCが低く、術後の低下が著しいほどPODが発症しやすいことを証明できれば、将来的には周術期の患者に対して、抗酸化物質、特に安全性の確立しているビタミンCの補充療法を行い、PODの発症を予防できるかどうかを検討していく予定である。

次年度使用額が生じた理由

各種酸化ストレスマーカーや炎症マーカーのELISAキットを購入する予定であったが、国内に在庫がなく、次年度に購入することにしたため。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2018

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] 心臓血管外科手術における術後せん妄と酸化ストレスの関連2018

    • 著者名/発表者名
      栗林由英
    • 学会等名
      日本麻酔科学会第65回学術集会

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公開日: 2018-12-17  

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