心臓手術では,人工心肺に起因した急性腎傷害が死亡率の増加に関連しており,その対策が喫緊の課題となっている。私たちはこれまでに,重症病態における臓器傷害には,炎症性サイトカインに加えて,酸化ストレスが大きく関与することを発見した。さらに,治療法として血液浄化療法に着目し,抗炎症作用および抗酸化作用に優れた施行方法,血液浄化膜(新規合成ビタミンE誘導体ETS-GS固定化膜)を開発した。本研究では,これらの成果の臨床応用に向けて,心臓手術関連急性腎傷害の発症メカニズムを明らかにし,人工心肺中に血液浄化療法を組み込んだ腎保護戦略を確立することを目的としている。 昨年度までの研究実績として,当施設における過去3年間の心臓手術後患者744名のデータを後ろ向きに調査して,CSA-AKIの発症状況および危険因子,患者転帰について検討した。結果は,発症率が約30%で,生命予後の悪化と関連しており,多変量解析により危険因子として緊急手術,術式,人工心肺時間が示された。 また,人工心肺に伴う炎症反応,酸化ストレスの経時的推移を測定して,急性腎傷害との関連性を解析した。現在は,抗酸化対策によるCSA-AKI発症の抑制効果について検討中である。
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