研究実績の概要 |
【目的】心筋虚血再還流傷害に対するナチュラルキラー細胞(NK細胞)の関与を明らかにするためにNK細胞活性を抑制するAAGM-1および吸入麻酔薬セボフルランを先行投与し、虚血再還流障害に対する影響を調べた。 【方法】AAGM-1群では虚血再還流実験24時間前にAAGM-1(50mcL)を尾静脈より投与し, コントロール群, およびセボフルラン群では, 注射用水のみを投与した。ラット(250-300g)を麻酔下に気管挿管, 静脈ライン、動脈ラインを確保し、左開胸下に左冠動脈前下行枝を確保した。セボフルラン群では, 虚血誘導前に2.5%セボフルランを15分間投与し, 15分間washout timeを設定した。左冠動脈前下行枝を結紮し心筋虚血を誘導し, その後120分間結紮解除による再還流を行なった。心筋虚血は, 虚血領域の色調変化および心電図上ST上昇で確認した。infarct size (IS)/Area at Risk (AAR)を測定し, AAGM-1およびセボフルランの虚血再還流障害へ及ぼす影響を調べた。また, 心筋障害の程度を調べるために, CKMBおよびトロポニンTを研究終了後に測定した。 【結果】コントロール群ではIS/AARが75±12%であったのに対し, AAGM-1群およびセボフルラン群では, それぞれ, 35%±10%, 40±10%と減少し, トロポニンTも減少していたことから, NK細胞活性が虚血再還流障害の制御に関与していることが示された。 【考察】AAGM-1およびセボフルランがNK細胞活性を抑制することで心保護作用を示す可能性が示唆された。両薬剤が, どの程度NK細胞活性を抑制するのか, NK細胞の動向についてフローサイトメトリーで検討し, TNF-αやIL-6などの炎症性サイトカインの動向について現在評価中である。
|
今後の研究の推進方策 |
vivo studyに関しては概ね完了したため, NK細胞活性の具体的な評価および, NK細胞により刺激される炎症性サイトカインの動態を明らかにし, 本研究の目的である, NK細胞活性と心保護作用の分子機序についても明らかにしていく。
|