研究成果の概要 |
吸入麻酔薬は心筋虚血再灌流傷害を抑制する一方, ナチュラルキラー細胞(NK 細胞)による免疫応答を抑制することが知られている。心筋保護作用の分子機序とNK細胞および免疫応答との関連についてはよくわかっていない. 本研究では, NK細胞の活性抑制が心筋虚血再灌流障害へ及ぼす影響を調べた. さらに免疫応答の評価として炎症性サイトカインの活性化の程度について調べた. NK細胞活性抑制は, 吸入麻酔薬による心保護作用と同等に虚血再灌流傷害を軽減した。また, 心保護作用だけでなく炎症性サイトカインの上昇が抑制された。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
吸入麻酔薬は, 長年,虚血再灌流障害を薬理学的に軽減できる薬剤として注目されてきたが,最近, がん患者では不利であるとする報告がなされた. これまで, 相反する吸入麻酔薬の効果について十分な研究がなされていなかった. 本研究でNK 細胞による免疫応答はその抑制により心保護作用が示されること, 吸入麻酔薬の心保護作用には影響しなかったことから, ミトコンドリアを標的器官とした吸入麻酔薬による心保護作用とは機序としてNK細胞および免疫応答が関連する可能性が考えられた。吸入麻酔薬による心保護作用の新たな機序の提言に加え,臨床状況に応じた麻酔薬の選択法を提言できると考える.
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