研究課題/領域番号 |
17K11091
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
佐野 文昭 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 助教 (10752826)
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研究分担者 |
大澤 匡弘 名古屋市立大学, 大学院薬学研究科, 准教授 (80369173)
祖父江 和哉 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (90264738)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 術後認知機能障害 / がん / 麻酔 |
研究実績の概要 |
超高齢社会である現在、高齢者のがん患者への麻酔症例数が増えており、高齢者で問題となる術後認知機能障害(POCD)の原因解明と予防法の確立は喫緊の課題である。本研究ではがんにおける吸入麻酔薬によるPOCDの発症機序を、動物モデルにより解明し、ヒトでの予防法を確立することを目的としている。まずは、①がんモデルマウスの認知機能への吸入麻酔薬の影響の検討(がんPOCDモデルの確立)を行い、②海馬アストロサイト選択的機能調節によるがん性POCD発症への影響の検討、③ 培養アストロサイトを用いたがん病態下での吸入麻酔薬の細胞障害性の検討、④ 吸入麻酔薬を用いた手術を行ったがん患者におけるPOCD発症リスクの臨床的評価を行っていく予定である。 今年度は、がんPOCDモデルを確立するため、麻酔条件の検討と、認知機能の解析方法としての新規物体認識試験の条件決定を行った。吸入麻酔薬としてイソフルランを1.4%、酸素を50%、2時間吸入させ、麻酔中はマウス用のパルスオキシメーターで酸素飽和度を、酸素濃度計で吸入酸素濃度をモニターした。コントロールである通常のC57BL/6マウスを用い、麻酔前に新規物体認識試験を実施し、麻酔後にも同試験を行い、認知機能に影響が出ないことを確認した。現在、メラノーマ細胞の培養を行っており、準備が出来次第、C57BL/6 マウスの右背側部皮下へがん細胞を接種し、モデルを作製する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
麻酔条件の検討と、新規物体認識試験の条件決定に時間を要したため、メラノーマ細胞を培養してマウスに接種する段階まで進んでおらず、がんPOCDモデルの確立が遅れているため。
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今後の研究の推進方策 |
培養中のメラノーマ細胞をマウスに接種し、がんPOCDモデルを早急に確立する。海馬における神経細胞の機能は、海馬急性スライスを作製し、海馬CA3 領域を高頻度反復刺激した後にみられるCA1 領域における興奮性シナプス後電位の集合電位(fEPSP)で評価する。さらに、がんPOCD モデルから海馬組織を取り出し、神経可塑的変化にかかわる細胞内シグナル分子の活性変化をウェスタンブロット法により測定する。海馬神経系細胞の形態は、各種抗体を用いた免疫組織学的手法で測定する。また、続いて海馬アストロサイトの選択的機能促進によるがん性POCD 発症に対する影響の検討も行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) がんPOCDモデルの確立を急ぎ行い、海馬機能の解析を、電気生理学、生化学的ならびに免疫組織学的手法により行うため、次年度使用額が生じた。 (使用計画) モデル確立のための動物の購入、サイトカイン検索、脳の免疫染色、アストロサイトの培養等に使用する予定である。
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