研究課題/領域番号 |
17K11092
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
平手 博之 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 助教 (20363939)
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研究分担者 |
祖父江 和哉 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (90264738)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ホエイペプチド / 薬物性肝障害 |
研究実績の概要 |
高齢化による多疾患への多剤処方の患者が増加しており、肝障害を起こしやすい環境にある。薬物性肝障害の治療の重要性が増すものと考えられるが、現在では被疑薬の中止が主で、積極的な治療・予防ができていない。本研究では、ホエイペプチドの肝保護作用に着目し、動物実験で効果を明らかにして有効成分を同定し、最終的には臨床研究でヒトのホエイペプチド投与による薬物性肝障害への影響の検討を目標としている。 昨年度から引き続き、マウスの四塩化炭素(CCL4)誘発急性肝炎モデルのホエイペプチドの肝保護作用の確認を行った。ホエイペプチド投与群とコントロール群(カゼイン投与群)の急性肝炎モデルで組織学的な肝変性を認めたものの、両群間に明らかな差を認めなかった。また、血清TNF-α、IL-1βも検出限界値以下だったことから、CCL4の投与量に問題があると考え、再検討を行った。 当初、CCL4の投与量は2mL/kgだったが、ホエイペプチド投与群とコントロール群間の肝酵素の結果に有意差を認めなかったことから、3mL/kgに増量していた。この是非を文献的に再検討したところ、CCL4の腹腔内投与量は多くの文献で0.3~2mg/kgだったため、量が多かった可能性がある。さらに、CCL4は慢性肝炎モデルで用いられることが多いため、本研究には適していなかったかもしれない。一方、APAPは、臨床応用がしやすく、ホエイペプチドが作用するグルタチオンが肝障害に関与している。以上から、CCL4肝炎モデルの検討を中止し、APAP肝炎モデルへ変更した。APAP肝炎モデルは、overnightの絶食の後、300mg/kgのアセトアミノフェンを腹腔内投与して作成した。APAP投与後6時間での肝酵素の上昇を確認している。 今年度は、このAPAP肝炎モデルでホエイペプチドの肝保護作用を確認し、培養系による有効成分の同定を試みる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
CCL4誘発急性肝炎モデルでは、ホエイペプチドの肝保護効果を確認できなかったので、APAP急性肝炎モデルに変更したため、計画が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度はAPAP急性肝炎モデルでホエイペプチドの肝保護作用を急ぎ確認する。ホエイペプチドを1週間投与した後、APAPを腹腔内投与し、0、6、24時間後の血清AST、ALT、LDH、GSHの測定、リアルタイムPCRにて肝組織のTNF-α、IL-6、IL-1βの測定、肝組織のHE染色・PAS染色にて、肝障害の程度を評価する予定である。 また、上記で肝保護作用を確認したら、ホエイペプチドを100kDの透析膜を用いて、高分子と低分子に分画したものを添加した培地で肝細胞を培養する。そこへAPAPを投与して薬物性肝障害状態として、壊死細胞の割合からホエイペプチドの肝保護作用に有効な成分を同定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)CCL4肝炎モデルからAPAP肝炎モデルへ変更したことにより、CCL4肝炎モデルで行った検査等を再度実施する必要があるため。 (使用計画)動物や肝細胞株の購入、サイトカイン検索、組織学的評価等に必要な試薬や物品に使用する予定である。
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