研究課題/領域番号 |
17K11096
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
市川 順子 東京女子医科大学, 医学部, 講師 (60318144)
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研究分担者 |
小森 万希子 東京女子医科大学, 医学部, 教授 (60178332)
小高 光晴 東京女子医科大学, 医学部, 臨床教授 (90280635)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 赤血球膜骨格 / 膜変形能 / 自己血 / 濃厚赤血球製剤 / 体外循環 |
研究実績の概要 |
当院がコロナ患者受け入れ施設となったため、赤血球変形能を測定する研究室への入室が制限され、新たな研究を進めるのは困難な状況であった。そこで、今まで得られた知見を論文としてまとめた。その内容は以下の通りである。体外循環使用の心臓手術予定患者を対象として、動脈カテーテルより1回5㏄の採血を全身麻酔開始前(基準値)、体外循環開始後、体外循環終了後、手術終了前の計4回行った。投与した血液製剤そのものも検体として、各検体の赤血球膜変形能、パーコールによる赤血球分画、赤血球恒数などを測定し、濃厚赤血球製剤(MAP)および自己血投与が循環血液中の赤血球膜変形能や密度にどのような変化を与えるかを比較検討した。その結果、貯蔵期間中に赤血球膜変形能は時間依存性に低下することが予測されたが、MAPは自己血に比較して貯蔵期間が短いにも関わらず、膜変形能が有意に低下していた。この理由として、自己血では輸血後移植片対宿主病の危険性がないため、放射線照射を行わないこと、血漿成分中のMg-ATPの供給により細胞内カルシウムイオン濃度や解糖系で生じる2,3DPG濃度を低く維持でき、膜安定性に寄与することなどを考えた。MAP投与により、体外循環終了後および手術終了前の赤血球変形能、平均赤血球容積(MCV)、平均赤血球血色素濃度( MCHC)が基準値と比較して有意に変化し、パーコール上の高密度分画が増えたが、自己血投与では、基準値と比較していずれも有意な変化はなかった。MAP投与による変化は、体内を循環している新鮮血が出血により変形能が低下したMAPに置換されて循環血液中の変形能が低下したと考えた。このことより、変形能が低下した血液製剤そのものによって輸血後に変形能が低下するが、体外循環や投与した血液製剤が受血者の赤血球に対して及ぼす影響は小さいことが推測された。
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