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2018 年度 実施状況報告書

CRPS発症と慢性化に関わる局所炎症反応と生理活性脂質の役割の解明

研究課題

研究課題/領域番号 17K11103
研究機関東京大学

研究代表者

伊藤 伸子  東京大学, 医学部附属病院, 講師 (80332609)

研究分担者 山田 芳嗣  東京大学, 医学部附属病院, 教授 (30166748)
研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワード脂質 / 疼痛学 / 神経科学
研究実績の概要

組織損傷時に、ホスホリパーゼA2(PLA2)を初発酵素として産生される脂質メデイエーターによる炎症細胞活性化が、脊髄レベル、末梢レベルでどのような変化をもたらすかを解明し、それらを適切な時期に抑制することにより、難治性疼痛病態の増悪を阻止し、効果的な治療法を開発することが本研究の目的である。
骨折モデルの作成が安定しないことから、臨床で認められ複合性局所疼痛症候群に発展する可能性のある、術後痛モデルについて生理活性脂質との関連を解析した。足底小切開による術後痛モデルを作成し、術前、足切開3時間後、足切開1日後、足切開3日後、足切開7日後の足底組織を採取し、高速液体クロマトグラフィー・タンデム質量分析(LC-MS/MS)による一斉定量系を用いて解析した。切開前と比較しシクロキシゲナーゼ(COX)系脂質(PGE2,PGD2,PGF2alpha,PGI2,TXB2,12HHT) リポキシゲナーゼ(LOX)系脂質(LTB4,LTC4) HETE類 (12HETE,5HETE,15HETE)は増加を認め、術後3時間でPGE2,PGD2,LTB4が有意に増加した。創傷治癒に関与する12HHTは、術後1日でより高値であった。抗炎症作用があると予想されるエイコサペンタエン酸EPA由来脂質12HEPEは術後3時間で高値であった。術後創傷部にて極めて早期にn-6系脂肪酸由来の生理活性脂質が検出され、炎症や疼痛惹起の要因となっている可能性が示唆された。抗炎症作用があるとされる生理活性脂質も産生上昇が認められ、炎症・抗炎症それぞれの脂質シグナルバランスが術後疼痛に影響していることが示唆された。さらに脱髄を引き起こすことから、神経障害性疼痛の発症メカニズムに関与していることが知られている生理活性脂質リゾリン脂質について、急性痛への関与の可能性を探索した。ホルマリン足底注入による急性組織障害性疼痛反応が、リゾホスファチジン酸LPAの産生酵素オートタキシン阻害剤の前投与により抑制されることがわかった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

脛骨骨折後のギプス固定が安定せず、固定解除後の機械的刺激に対する行動評価も足底位置の変形により、より正確な評価ができないことを繰り返しモデル作成に難渋している。そのためよりモデル作成が容易で短期間で疼痛評価までできる術後痛モデルでの生理活性脂質の変化の解析に切り替えた。

今後の研究の推進方策

組織損傷に伴う局所での生理活性脂質の時系列変化を中心に、慢性化にどのように関与するのか、炎症と抗炎症に関わる生理活性脂質の動態を解析していく。生理活性脂質受容体欠損マウスや受容体拮抗薬を用いた際の脂質産生及びサイトカイン産生との関連や、脊髄神経活性化指標としてのリン酸化ERK変化をを組織免疫染色により解析し、生理活性脂質と局所炎症由来の慢性難治性疼痛の病態を解明していく。神経損傷時の脱髄現象に直接関わることが示唆されているリゾリン脂質について、急性組織障害性疼痛への関与について、様々なリゾリン脂質種の解析を含め、リゾリン脂質産生酵素やリゾリン脂質受容体拮抗薬の効果について詳細に研究を進める。

次年度使用額が生じた理由

サイトカイン量定量や培養細胞での受容体シグナル解析の条件検討をしており、実際の実験まで進行しておらず、未購入の試薬がある。次年度にはこれらの試薬を購入し、研究を幅広く進める予定である。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2018

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] ロイコトリエンによる疼痛伝達機構2018

    • 著者名/発表者名
      伊藤伸子、浅原美保
    • 雑誌名

      LiSA

      巻: 25 ページ: 61-68

  • [雑誌論文] Perioperativeballoon pulmonary angioplasty enabled noncardiac surgery of a patient with chronic thromboembolic pulmonary hypertension (CTEPH)2018

    • 著者名/発表者名
      Watanabe K, Ito N, Ohata T, Kariya T, Inui H, Yamada Y
    • 雑誌名

      Medicine

      巻: 98 ページ: 1-5

    • DOI

      10.1097/MD.0000000000014807.

    • 査読あり
  • [学会発表] 術後痛創傷部における生理活性脂質の解析2018

    • 著者名/発表者名
      白尾 朋代、浅原 美保、橋本 陽子、伊藤 伸子、横溝 岳彦、山田 芳嗣
    • 学会等名
      日本麻酔科学会
  • [学会発表] 急性炎症性疼痛に対するリゾフォスファチジン酸の影響2018

    • 著者名/発表者名
      橋本 陽子、伊藤 伸子、浅原 美保、戸津 ときえ、住谷 昌彦、山田 芳嗣
    • 学会等名
      日本麻酔科学会
  • [学会発表] Role of Signaling of Lysophosphatidic Acid in Mice Acute inflammatiry Pain Model2018

    • 著者名/発表者名
      Hashimoto Y, Ito N, Asahara M, Hasegawa K, Saigusa D, Yamada Y
    • 学会等名
      World Congress on Pain
    • 国際学会
  • [学会発表] マウス急性炎症性疼痛モデルに対するリゾフォスファチジン酸シグナルの役割2018

    • 著者名/発表者名
      橋本 陽子、伊藤 伸子、浅原 美保、長谷川 京子、三枝 大輔、山田 芳嗣
    • 学会等名
      日本疼痛学会

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公開日: 2019-12-27  

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