前立腺癌はホルモン非依存性となってもARを介した増殖の制御を受けており、この機構の解明によりさらなる癌の制御の可能性があると考えられる。さらに、上記ARの質的異常の代表例としてAR変異体、とくにARのリガンド結合領域を欠いた変異体であるARスプライシングバリアント(AR-V7 etc.)が新規ホルモン治療剤に対する抵抗性を獲得する機序に重要であることが近年示されつつある。 ARはダイオキシン受容体(AhR)によるユビキチン化により分解されることが報告されている。また、我々はARおよびAhRを発現する前立腺癌細胞株を用いてダイオキシン投与によるリガンド依存性の細胞株増殖制御につき研究を進めてきている。本研究はその延長として、AR変異体を直接分解することにより去勢抵抗性前立腺癌の増殖抑制をもたらし治療的効果につなげることを目的とするものである。 本研究では、種々のダイオキシン受容体リガンドによる前立腺癌細胞株に発現させたARスプライシングバリアント分解の程度、そしてその細胞株のin vitroおよびin vivoにおける増殖・浸潤・転移抑制効果を検討し、抑制効果を有するダイオキシン類の必要量および毒性(致死量)についての検討を行う。 これにより毒性の少ない内因性ダイオキシン受容体リガンド投与が去勢抵抗性前立腺癌の治療法につながることを確認したいと考えている。また投与法としてリガンド投与は遺伝子治療やワクチン療法などとは異なり、経口投与など簡便な方法でも効果があることも予想される。
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