研究課題/領域番号 |
17K11119
|
研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
畠山 真吾 弘前大学, 医学部附属病院, 講師 (10400136)
|
研究分担者 |
米山 徹 弘前大学, 医学研究科, 助教 (50587649)
石山 新太郎 弘前大学, 理工学研究科, 教授 (60355021)
飛澤 悠葵 弘前大学, 医学研究科, 助教 (70623768)
大山 力 弘前大学, 医学研究科, 教授 (80282135)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | がん特異的中性子治療 / ペプチド |
研究実績の概要 |
2018年度の成果として以下の結果を得た。①ホウ素10核種(10B-IF7の合成:IF7ペプチドと10B原子の合成を行い新規10B-IF7の開発を試みた。またホウ素化合物(ボロン薬剤)には10B原子、ボロカプテイト (Borocaptate Sodium:BSH)、ボロンフェニルアラニン(ホウ素+フェニルアラニン:BPA)の3種類がある。10B原子そのものはがん特異性が低いため、臨床応用には10B原子を籠状に配列したBSHやフェニルアラニンの取り込みを利用したBPAが用いられてきた。また、IF7ペプチドは末端にシステインが付加されており、様々な分子と化学結合可能である。過去の検討により、IF7は架橋剤(クロスリンカー)を用いて各種薬剤と結合を試みた。その結果、本研究でも同様の手法を用いIF7と10B原子を結合させ、10B-IF7を合成することに成功し、2種(10BSH-IF7、10BPA-IF7)を開発した。②我々の開発したIF7ペプチドはがん特異性が高いため、がん特異性が低い10B原子や10BSHをIF7ペプチドと結合させ、がん特異性を向上させることが可能であると仮定し、この2種のホウ素-IF7を用いてマウス固形腫瘍モデルに投与し、ホウ素集積を検討した。膀胱癌細胞株MBT2をマウスの皮下に移植し、1x1㎝程度の大きさになったところでBPA単独、10BSH-IF7、10BPA-IF7を尾静脈注射にて投与した。初回実験では既存の有効ホウ素投与量(BPA単独)に調整したところ、IF7の投与量が過剰となり、投与後に死亡してしまったため、投与法を腹腔内投与とした。その後、5分、10分、20分、40分で臓器を摘出しボロン薬剤の集積を検討した。その結果、腫瘍に特異的に集積する傾向が確認され、マウスでの治療効果を検討中である
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成29年度の目標は10B-IF7の合成であり、これは合成に成功した。IF7は架橋剤(クロスリンカー)を用いて各種薬剤と結合を試みることにより、本研究でも同様の手法を用いIF7と10B原子を結合させ、10B-IF7を合成することに成功した。その結果、10BSH-IF7と10BPA-IF7の2種の新規薬剤を開発することができた。平成30年度はマウスでの抗腫瘍効果を確認することであった。京都大学の原子炉にて中性子照射実験を2回行ったが、効果にばらつきがあり、現在安定的な効果を検出できる実験系を検討中である。徐々に成果が出ているが、原子炉の使用に制限があり思うように実験が組めないのが難点である。そのため、おおむね順調に進展していると判断できるが、進捗は遅く、やや遅れていると判断される。
|
今後の研究の推進方策 |
今後はがんモデルマウスによる10B-IF7の抗腫瘍効果を確認するための条件設定を行い、京都大学原子炉実験所にて、照射時間の調整を検討する必要がある。また10B-IF7の体内動態を調べるため、Invivo imagingも実験可能か協議中である。また種々の癌種への応用効果を検討するため、前立腺癌、膀胱癌、腎癌など泌尿器固形腫瘍の皮下移植モデル、同所移植モデルも作成が必要である。よって今後も更なる検討を継続する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
実験消耗品の一部を次年度に見送ることにしたため、差額が生じた。次年度の実験消耗品で使用する予定である。
|