研究課題
現在の抗がん剤治療が抱える弱点は、細胞毒性の強い薬剤を全身投与する点にある。これら副作用を減らし高い抗腫瘍効果を得るためには高濃度の抗がん剤をがんのみに到達させる必要がある。我々は腫瘍血管のアネキシンA1(AnxA1)に特異的に結合する糖鎖抗原類似ペプチド(F7ペプチド)を開発し、IF7ペプチドー抗がん剤複合体を作成し腫瘍血管を標的としたがん特異的化学療法を開発した。しかし多発転移で腫瘍量が多い場合は抗がん剤のみでは耐性化などの理由により治癒困難が予想され、進行がん状態でも耐性が生じない、強力な治療法との組み合わせが必要と推測された。正常細胞にあまり損傷を与えず腫瘍細胞のみを選択的に破壊する治療法として、ホウ素中性子捕捉療法(BNCT: Boron Neutron Capture Therapy)がある。ホウ素10核種(10B)は、中性子照射により核反応を起こし、アルファ線を発生させる。アルファ線は周辺組織への影響が極めて低いため、X線(γ線)照射の弱点を克服できる。しかしBNCTの最大の弱点は原子炉設置とホウ素10核種の取り込み効率である。そこで我々は、IF7ペプチドをBNCTに応用し、より低侵襲かつ高効果ながん治療法の開発を目指すことを目的とした。本研究では、まず、ホウ素10核種(10B)とIF7ペプチドの結合に着手し、クロスリンカーを用いて新規薬剤10B-IF7の作成に成功した。10B-IF7がマウス腫瘍に集積することを確認するため、担癌マウスに尾静注し、腫瘍と正常組織のボロン分部濃度を調査すると、腫瘍に高濃度に集積していることが示された。さらに10B-IF7を用い、担癌マウスに中性子治療を行うと、コントロールマウスに比べ、治療群で有意な腫瘍縮小が得られ、腫瘍血管内皮細胞を標的としたBNCTが有効である可能性が示唆された。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (14件) (うち国際共著 2件、 査読あり 14件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 4件)
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