研究課題/領域番号 |
17K11122
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
武田 裕司 山形大学, 医学部, 助教 (90302299)
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研究分担者 |
奈良 英利 山形大学, 医学部, 助教 (00375338)
黒田 悠太 山形大学, 医学部, その他 (00594326)
加藤 智幸 山形大学, 医学部, 准教授 (40396560)
土谷 順彦 山形大学, 医学部, 教授 (70282176)
浅尾 裕信 山形大学, 医学部, 教授 (80250744)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 膀胱がん / 炎症 / 好中球 / 抗腫瘍活性 |
研究実績の概要 |
本年度は、第一の目的である『末梢血中および尿中の好中球のGPI-80発現解析法の確立』を実施した。健常者の尿と膀胱がんのBCG治療患者の尿を用いて、細胞の回収を試みた。また、回収した細胞を用いて細胞の形態観察とフローサイトメトリー解析を実施した。 その結果、尿中の細胞の形態は、95%以上は好中球の形態を示していた。一部、上皮細胞の混入が認められたが、フローサイトメトリー解析の結果、やはり、95%以上が好中球分化成熟抗原(GPI-80)陽性細胞であり、好中球様細胞と考えられた。 そこで、尿中の解析法を確立した後、膀胱がんのBCG治療患者のエントリーを進めた。現在、5例目のエントリーが終わり、経過測定している。また、好中球様細胞の性質を明らかにするため、通常、好中球には発現が認められていないCD163, CD197, HLA-DR, CD85jなど細胞傷害活性に関わる分子の測定を実施した。 現在、少数例であるが、BCG治療の繰り返し頻度に依存して、細胞あたりのGPI-80発現量が急激に上昇することが判明した。一方、GPI-80の分散性(coefficent variation, CV)とLAP-1(TGF-beta1前駆体)の発現量は減少する傾向が認められた。これらの変化が、BCG治療効果の指標になるのではないかと想定している。また、GPI-80 CVが減少する一方で、GPI-80発現量が上昇する変化は、抗腫瘍作用を発揮する好中球指標となりえると想定された。 今後、症例数を増やし、この想定を確認する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
BCG治療中すべての検体において多量に細胞が存在する訳では無く、尿中の細胞が非常に少ない検体もあった。そのため、予定したすべての項目の測定を実施することが困難であった。また、治療が進むと頻尿により、50 mL以上の採尿が容易ではない場合もあったため、回収尿量の変更も必要であった。更に、尿中の細胞は、FITC様の自家蛍光が著しく上昇していた。このため、解析に用いることができるパラメータに制限を加えざるを得なかった。
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今後の研究の推進方策 |
現時点では、明確な変動を示す指標として、GPI-80, LAP-1の変化を見いだしている。一方、すべての検体において機能解析するための十分な細胞数を得ることは困難と考えられた。今後、ケモカインレセプターなどの変動も検査項目に加え、少量の細胞で解析が可能なフローサイトメトリー解析を中心に追跡解析を行って行く予定である。 また、FITC様の自家蛍光の著しい上昇の原因は尿中成分に起因すると考えられたが、その物質は現時点も不明である。この物質の同定も試みたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
BCG治療となる膀胱がん患者さんの検体数が、予想よりも少数であったため、試薬などの消耗品の使用頻度が少なかった。
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