研究課題
癌などの慢性炎症状態ではmyeloid-derived suppressor cells (MDSCs)と呼ばれる好中球様の免疫抑制細胞が出現する。一方、非筋層浸潤膀胱癌では、BCG膀胱内注入療法による高い治療効果が約束された癌免疫療法が知られている。この治療法は、膀胱内BCG注入が1週間毎に行われ、間欠的な慢性炎症が生じている。そこで、本研究では、BCGによる炎症反応について検討し、がん免疫応答亢進の指標を明らかにすることを試みた。具体的には、好中球様細胞が尿中に多く認められたことから、この細胞に着目した。そして、全身性および局所性の炎症反応を検討するため、末梢血中と尿中のMDSCsの指標をフローサイトメトリー解析した。MDSCsの指標には、以前に我々が見出した、GPI-80のcoefficient of variation (CV)を用いた。また、尿中の好中球様細胞を回収し、mRNA発現の網羅解析を行い、細胞の活性化状態について調べた。BCG注入処置の反復回数に伴い尿中の好中球様細胞の増加が認められた。このことから、BCG膀胱内注入療法では炎症反応が間欠持続的に生じていると確認できた。しかし、末梢血、および、尿中のMDSCsの指標の上昇は認められなかった。一方、尿中の好中球様細胞には、獲得免疫系の活性化を惹起するCXCL10とMHC IIの上昇が認められた。以上の結果から、GPI-80 CVは、免疫抑制型の、そして、CXCL10とMHC IIの指標は、免疫亢進型の好中球様細胞の指標となることが明らかになった。そして、BCGはMDSCsを誘導することなく、獲得免疫系の活性化を惹起する炎症反応を生じさせる事が確認できた。今後、我々が見出した、免疫抑制型と亢進型の好中球様細胞の指標は、様々な免疫治療の治療効果予測の指標として発展できると期待している。
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Tohoku J Exp Med
巻: 249 ページ: 203-212
https://doi.org/10.1620/tjem.249.203.
http://www.id.yamagata-u.ac.jp/Imm/h29-takeda/index.html