研究課題
我々のグループは親水性ミセルとして、カチオニックリポソームによるBCG細胞壁骨格の製剤化を試み、細胞親和性を高め、癌細胞質内に菌体細胞壁脂質成分(BCG-cell wall skeleton)を効率的に輸送できる製剤の開発を試みた。その結果ラットBBN発癌モデルにおいて、抗腫瘍効果が示されることを報告し、BCG生菌でなくとも、BCG細胞壁成分に抗腫瘍効果があることを証明した。しかし、このときの製剤は構造が複雑で粒子径が大きく、製剤化には取り扱いが困難であった。そこで一旦は、粒子径を均一にする方法も開発したが、包埋率の点や、スケールアップの困難さからBCG-cell wall skeletonを使用することは断念した。そこで、より確実に取り扱える細胞壁の活性成分を用いた製剤の開発を試みることにした。BCG細胞壁から抽出したミコール酸はすべて質量分析により分子量の測定が可能であり、サブクラス(α、ケト、メトキシ)を比較した結果、Tokyo株ではケトMAに最も強い抗腫瘍効果を認め、PLOS ONEに報告した。この段階で、一時製剤化を考慮したが、ミコール酸とtrehalose-6 6’-dimycolate(TDM)を比較した結果、TDMにより強い活性があり、かつレセプターが明らかにされているためメカニズムの解明が行いやすいなどの点から、今後の開発はTDMで行うこととした。我々はActinomycetalesに属する細菌細胞壁のTDMを安定的に抽出精製する技術を確立することに成功しており、BCG Connaught株のTDMが、強力な抗腫瘍効果を示すことを明らかにしつつある。さらに、作用機序においても、Tリンパ球や樹状細胞の関与を検証しており、2020年度中に論文発表可能と考えている。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
PLoS One.
巻: 14(1) ページ: 1, 19
10.1371/journal.pone.0209196.