研究実績の概要 |
進行前立腺癌における転移の大部分は骨転移であるが、ひとたび転移を起こすと根治は困難となる。すでに前立腺癌骨転移巣では骨間質細胞から分泌されるCCL5が前立腺癌細胞の遊走能を亢進させることを明らかにした。さらに、コーヒー含有抗炎症作用物質カーウェオールとカフェストールが前立腺癌の進展抑制効果を持っており、各種ヒト前立腺癌細胞(LNCaP, LNCaP-SF)において、CCL5の受容体であるCCR5の発現を濃度依存的に抑制することを明らかにした。一方で、CCL5は、LNCaP, LNCaP-SFともに、カーウェオールとカフェストールで分泌抑制されなかった。興味深いことに、アンドロゲン非依存性株であるLNCaP-SFはアンドロゲン依存性株LNCaPと比較し、ベースラインのCCL5分泌は高かった。カーウェオールとカフェストールはSTAT3のリン酸化を濃度依存的に抑制することも明らかにしたが、内因性のSTAT3インヒビターであるPIAS3は変化することはなかった。またカーウェオールとカフェストールはアンドロゲン受容体の発現を濃度依存的に低下させ、さらに、アンドロゲン受容体の核内移行も阻害した。アンドロゲン受容体シグナルを低下させたにもかかわらず遊走能も低下させていた。カーウェオールとカフェストールのこれらの作用については相乗的な効果が認められた。カーウェオールとカフェストールはCCL5-CCR5シグナルを抑制することで、前立腺癌細胞の遊走能を低下させている可能性が示唆された。
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