研究課題/領域番号 |
17K11130
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
杉村 芳樹 三重大学, 医学系研究科, リサーチアソシエイト (90179151)
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研究分担者 |
加藤 学 三重大学, 医学系研究科, 助教 (60626117)
石井 健一朗 三重大学, 医学系研究科, 助教 (90397513)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 前立腺 / 増殖機構 / 間質分化誘導 / ソニック・ヘッジホッグ / 無血清器官培養実験法 / 去勢条件 / 基底上皮細胞 / 間質リモデリング |
研究実績の概要 |
本年度は、マウス前立腺間質の構造を改善する、すなわち間質分化誘導により前立腺の増殖機構が安定化するか否かを検討することを目的とした。今回、我々は前立腺間質構造を決める生体内因子としてソニック・ヘッジホッグ (Shh)に着目した。これまでに、膀胱や小腸において上皮由来Shhが平滑筋細胞の分化やホメオスタシス維持に重要な役割を担うことが報告されている。そこで、マウス前立腺に対するShhの役割を検証する目的で、マウス前立腺後側葉 (dorsolateral prostate: DLP)を実体顕微鏡下にて微小解剖し、ミリセルフィルター上で培養する無血清器官培養実験法を施行した。まず、去勢条件下でマウスDLPを培養すると基底上皮細胞数が有意に増加することを確認した。そこで、去勢条件下でマウスDLPを精製Shh処理したが基底上皮細胞数に変化は認められなかった。次に、去勢条件下でShh modulator(Shhシグナルの活性化剤)として市販されている化合物SAG処理したが基底上皮細胞数に変化は認められなかった。逆に、去勢条件下でShhシグナルの阻害剤cyclopamine処理しても基底上皮細胞数に変化は認められなかった。最後に、去勢条件下で生じる間質リモデリングをテネイシンC (TNC)の発現で評価したところ、精製Shhおよびcyclopamine処理ではTNC発現に変化なかったものの、SAG処理ではTNC発現が顕著に減少した。 以上の結果より、去勢条件下でもSAG処理によりShhシグナルを活性化させると間質リモデリングが改善されるものの、基底上皮細胞数を増加させる増殖シグナルの抑制には至らないことが判明した。つまり、間質分化誘導だけでは前立腺の増殖機構が安定することはなく、それだけ前立腺にとって男性ホルモン(アンドロゲン)が重要な役割を担っていることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウス前立腺後側葉をミリセルフィルター上で培養する無血清器官培養実験法を用いることで、Shh modulator(Shhシグナルの活性化剤)SAGが去勢条件下での間質リモデリングを改善することを見出すことができた。試薬として高価なSAGを去勢マウスへ長期間、投与することは実現不可能であったため、無血清器官培養実験法によりこの問題点を克服できたことは大きな成果である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、マウスにおける去勢環境をin vitroの無血清器官培養実験法で模するために男性ホルモン(アンドロゲン)非存在下でのShh modulator(Shhシグナルの活性化剤)SAGもしくはShhシグナルの阻害剤cyclopamineの効果を検証した。次年度は、男性ホルモン(アンドロゲン)存在下でのSAGもしくはcyclopamineの効果を検討するなど、前立腺におけるShhシグナルの役割を明らかにしていきたい。
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