研究課題
昨年度、我々はアンドロゲン非存在下で生じるマウス前立腺間質リモデリングの改善にはソニック・ヘッジホッグ (Shh) modulator(Shhシグナルの活性化剤)として市販されている化合物SAG処理が有効であることを見出した。そこで本年度は、マウス前立腺におけるShhシグナルとアンドロゲンシグナルの関係性を検証した。評価系は昨年度と同様に、マウス前立腺後側葉 (dorsolateral prostate: DLP)を実体顕微鏡下にて微小解剖し、ミリセルフィルター上で培養する無血清器官培養実験法を採用した。マウスDLPにおける基底上皮細胞の局在はアンドロゲンの有無で変化する。アンドロゲン存在下において基底上皮細胞は非連続的に局在するものの、アンドロゲン非存在下では間質リモデリングの誘導によるFGF2-FGFRシグナルの活性化により基底上皮細胞が過増殖する。これを踏まえて、ジヒドロテストロン (DHT)存在下でマウスDLPを培養しつつ、SAG処理、Shhシグナルの阻害剤cyclopamine処理、精製Shh処理を施行した。まず、いずれの処理群においても、特にSAGの濃度を上げたとしても間質リモデリングのマーカーであるテネイシンC (TNC)の発現低下・消失は認められなかった。この時、いずれの処理群においても基底上皮細胞の局在に変化は認められなかった。以上の結果より、Shhシグナルによる前立腺間質構造の調節はアンドロゲン非存在下でのみ働く経路であること。さらに、アンドロゲンの有無に関わらず、基底上皮細胞の局在にはShhシグナルとは全く関係ない経路が働いている可能性が示唆された。つまり、我々はアンドロゲン非存在下で観察される基底上皮細胞の過増殖はShhシグナルの調節とは関係していないと考えるに至った。
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Laboratory Investigation
巻: - ページ: -
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