ゼノグラフトモデルの中で、去勢反応性株2種類と去勢抵抗性株2種類との遺伝子発現をRNA sequence法により網羅的に比較したところ、去勢反応性株と比較して、去勢抵抗性株で発現の高い分子の一つにIL13Ra2があった。IL13Ra2は治療標的だけではなく、他の癌腫の薬剤抵抗性獲得とも関与する分子であり、本研究で解析を行うこととした。前立腺癌細胞株において発現を確認したところ、去勢感受性細胞(LNCaP)よりも去勢抵抗性株細胞(PC3)で発現が高い傾向を認めた。そこで、レンチウィルスベクターを用いて、LNCaP細胞にIL13Ra2を安定的に強制発現させた細胞株を作成した。in vitroの実験ではアンドロゲン除去培地において、強制発現株とコントロー細胞株で増殖能に差を認めた。in vivoの実験では強制発現細胞株と、コントロール細胞株を免疫不全マウスに皮下注射し、去勢を行ったところ腫瘍の生着率、増大速度に差を認めた。また、過去に採取されたホルモン治療前前立腺癌の生検検体を約30例収集し、IL13Ra2の免疫染色を行った。その結果、ホルモン療法が長期に奏効している患者と比較して、ホルモン療法中に早期に抵抗性となった患者検体において、有意にIL13ra2の発現が高い傾向を認めた。今後、さらに症例数を増やして、IL13Ra2の発現が、去勢療法反応性予測マーカーになるかどうかの評価をおこなっていく予定である。
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