研究課題/領域番号 |
17K11143
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
蘆田 真吾 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 講師 (80380327)
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研究分担者 |
中川 英刀 国立研究開発法人理化学研究所, 統合生命医科学研究センター, チームリーダー (50361621)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 前立腺癌 / 病原体 |
研究実績の概要 |
まず、前立腺癌患者20例から手術によって前立腺を摘出した。摘出した前立腺組織をスライスし、さらに、これを4分割した後、凍結保存した。性行為感染症の既往のある前立腺癌患者は2例のみであったが、尿路性器感染症の既往のある患者を2例に認めた。それぞれの部位から高品質RNAを抽出し、解析試料として凍結保存しておいた。高品質RNAは理化学研究所に送付され、各症例の癌部20サンプルのRNA-seqライブラリーが作成され、次世代シークエンスが行われた。シークエンスはすべて終了しており、現在、シークエンスデータからpathogenの検出を行っている。その方法は、以下の通りである。 RNA-seqライブラリーは、Illumina社 のプロトコルに従って作成し、HiSeq 2000によってシークエンスする。RNA-seqデータから、unmapped readについて新たにアセンブルを行い配列決定するde novoアセンブリー解析を行う。①(a)クオリティ値がQ30以上(b)マップされない、またはマッチした配列が30塩基以下、の条件を満たすショートリードを集める。ショートリードを場所が特定されないゲノム配列をもったhg19リファレンスゲノムに対してBLATによって配列する。そして、50塩基以上のマッチした塩基を持つものを除く。②残りのショートリードをABySSによってアセンブルする。③アセンブルされたコンティグとそれぞれのサンプルのシングルトンを混合し、スーパーコンティグを作るために、CAP3を使ってさらにアセンブルする。④作られたスーパーコンティグをBLASTを用いてNCBI ftpサイト上の微生物ゲノムに配列し、PINDENTスコアが95以上のものを抽出する。そして、スーパーコンティグを構成しているサンプルを調べ、抽出された微生物のシークエンス配列をもつ候補サンプルを導き出す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
サンプルは順調に収集できたが、性行為感染症の既往のある患者が少なかった。性行為感染症の頻度の問題があり、時間的な余裕もないため致し方ないと思われた。 また、total RNAを抽出し、rRNA depletion後にRNA-seqライブラリーを作成した。これは、poly Aのついていない微生物のRNAをとるためと、RNAが分解を起こしていたためである。 もうすぐ、最初の結果が出る予定である。
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今後の研究の推進方策 |
Pathogenが検出されれば、ゲノムへの組み込みの同定を試みる。すべてのRNA-seq データからのunmapped read をde novo アセンブリーで同定したpathogen のゲノムに配列する(バリデーション)。さらに、pathogen の前立腺癌ゲノムへの組み込みを調べるために、全ゲノムシークエンスのunmapped read をそのpathogen のゲノムに配列する。そして、pathogen の前立腺癌ゲノムへの組み込みサイトおよび遺伝子を同定する。 次に、検出したpathogen の前立腺への感染を別サンプルを用いて検証する。この工程は、検出したpathogen のバリデーションとなる。まず、サンプル収集を行い、DNAを抽出し、pathogen に特異的なプライマーを用いてPCR を行い、感染の有無を調べる。そして、前立腺癌におけるpathogen 感染の頻度を算出する。 さらに、臨床的特徴(年齢、PSA 値、グリソンスコア、ステージなど)とpathogen 感染の有無との間に相関があるかどうかについて統計学的手法を用いて調べる。有意な相関が見られた場合、pathogen 感染がその因子に寄与することが分かり、後の機能解析に役立つと考えられる。
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