我々は、これまでに、前立腺癌患者20例の組織サンプルを用いてRNA-seq解析を行い、pathogen候補として4つの細菌を同定した。同定されたpathogen候補のうち、細菌Aは、これまでにも前立腺癌組織への感染の報告があるが、今回の検討の結果で確証が得られたと考えられた。細菌B、C、Dについては、これまでに全く報告がなく、新たな前立腺癌のpathogenとして期待が持てると考えられた。そして、それぞれについて免疫組織染色あるいはPCRによってバリデーションを行った。細菌Aに関しては、モノクロナール抗体を用いて免疫組織染色を行ったところ、20例中19例の前立腺癌組織において細菌Aを検出できた。 我々は、細菌Aを有力候補として、まず、発癌機序の解明を行うため、前立腺正常上皮細胞に細菌Aを感染させ、24時間、48時間、2週間後にRNAを抽出し、マイクロアレイ解析を行った。マイクロアレイ解析の結果、細菌Aを感染させた細胞において、発癌に重要な役割を果たす遺伝子群の遺伝子発現低下を認めた。そこで、これら遺伝子群の遺伝子発現低下の機序について研究を進めた。まず、epigeneticな要因としてメチル化の有無について調べた。Methylation specific PCR法を用いて、これら遺伝子群のメチル化の有無を調べたところ、メチル化は認めなかった。次に、細菌Aが、これら遺伝子群のプロモーター活性に影響を与えるかどうかについて調べるため、これら遺伝子群のプロモーター領域をクローニングし、現在、プロモーターアッセイを行っている。
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