【研究目的】腎盂尿管癌は症状に乏しく診断に際して疾患特異的腫瘍マーカーが無いため早期発見が困難である。我々は膀胱癌の腫瘍マーカーとしてラミニンγ2単鎖の高感度ELISA測定系を開発した。ラミニンγ2単鎖は、尿路上皮癌細胞に高発現する腫瘍増殖因子蛋白である。特に腎盂尿管癌患者の尿では異常な高値を示すことが示唆されている。本研究は、腎盂尿管癌マウスモデルを製作し、ラミニンγ2単鎖の基礎的研究を行うとともに、腎盂尿管癌患者由来の尿を用いてラミニンγ2単鎖を測定することで、腎盂尿管癌における新規診断マーカーの開発応用を行うことを目的とする。【研究実績】昨年度は、胸腺無形性ヌードマウスを用いて、経尿道的同所移植モデルの製作を行った。ヒト尿路上皮癌細胞株のなかで、ラミニンγ2単鎖を高発現しているKU-7およびKMBC-2を中心に腫瘍の生着率を検討した。KU-7は高率に腫瘍生着を認めたが、KU-7とHeLa細胞(子宮頸癌細胞)にクロスコンタミネーションが存在するとの報告があり(J Urol. 2013 Oct;190(4):1404-9.)、KU-7の使用を中止した。KMBC-2においては約60%の腎盂生着率であったが、さらに高率化を目指し、ヌードマウスへの移植とリサイクルを行った。ヒト由来臨床検体を用いたラミニンγ2単鎖の測定において、『上部尿路上皮癌に対するラミニンγ2単鎖のバイオマーカーとしての有用性に関する臨床研究』として倫理委員会の承認を得た。一方で、保存方法などの点で課題があり、検体の採取解析に至っていない。
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