研究実績の概要 |
腎細胞がんのWarburg効果の機序の一つとして、転写因子であるnuclear factor erythroid 2–related factor 2 (Nrf2)の発現を、50症例の摘出検体を用いて検討しました。Nrf2は抗酸化作用およびエネルギー代謝に関与していることが知られています。Nrf2遺伝子の変異の有無を次世代シーケンサーで、Nrf2のプロモーター領域(rs6721961)のsingle nucleotide polymorphism (SNP)をreal-time polymerase chain reaction with confronting two-pair primers (PCR-CTPP)で、また、Nrf2タンパク質発現を免疫組織染色にて検討しました。5症例にNrf2の突然変異を、20症例ではrs6721961でC/AまたはA/Aを認めています。これらのNrf2の突然変異症例および、rs6721961でC/AまたはA/AのSNPsの症例では、Nrf2タンパク質発現が高く、且つ予後不良であることを認めました。また、Nrf2タンパク質が高発現である症例は多変量解析において予後不調である因子であることも見出しました。これらの結果は、Nrf2が腎癌の進行に関与していることを示唆するものであり、国際誌にて報告しました(Yamaguchi Y, Kamai T, et al. Nrf2 gene mutation and single nucleotide polymorphism rs6721961 of the Nrf2 promoter region in renal cell cancer. BMC Cancer. 2019 Nov 21;19(1):1137. doi: 10.1186/s12885-019-6347-0.)。
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