CD44vを制御すると報告されている、潰瘍性大腸炎の治療薬であるサラゾスルファピリジン (sulfasalazine: SSN)を用いてMBT-2V膀胱癌細胞株 (高率に肺転移を生じる株)に対するシスプラチン (CDDP)の殺細胞効果増強の可能性をin vitroで検証した。SSZは濃度依存性に殺細胞効果を認め、同時にROSの産生増加が確認された。CDDP単独治療に比べてSSZを加えることによりMBT-2V細胞の殺細胞効果の増強が確認された。SSN治療によりCD44v9の発現は有意に低下し、またphospho-p38MARKの発現は有意に上昇した。MBT-2V細胞をマウスに尾静注し作成されたマウス膀胱癌肺転移モデルを作成した。本モデルを用いてSSZの治療効果を検討した。SSZは500mg/kgを2日投1日休で腹腔内投与し、CDDPは2mg/kgを1日投4日休で腹腔内投与した。腫瘍移植後15日目の平均肺転移巣数は無治療群で114.3個、SSZ単独治療群で50.6個、CDDP単独治療群で69.2個であったが、SSZ+CDDP併用治療群では15.5個であり、有意に少なかった。以上のことからCD44vを制御するとされているSSZはROSの産生抑制を介してCDDPの殺細胞効果を増強させることは確認された。またSSZ+CDDP治療は肺転移を有する膀胱癌の新規治療戦略になりうることが示唆された。
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