研究課題/領域番号 |
17K11160
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
小島 聡子 帝京大学, 医学部, 准教授 (10345019)
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研究分担者 |
関 直彦 千葉大学, 大学院医学研究院, 准教授 (50345013)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | マイクロRNA / 去勢抵抗性前立腺癌 / CRPC / 次世代シークエンサー / 機能性RNA / ネットワーク |
研究実績の概要 |
進行性前立腺癌の治療としてホルモン療法を行っても、次第に耐性を獲得し、去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)となることが知られている。その機序についてはまだ明らかになっておらず、一旦CRPCとなると、その予後は約3年と限られている。 我々は機能性RNA(マイクロRNA)に注目し、これまでCRPCへの進展の機序を研究してきた。本研究では、次世代シークエンサーを用いて蛋白コード遺伝子・蛋白コード非遺伝子を加味した「CRPCにおける機能性RNA発現プロファイル」の作成を行うことしている。このプロファイルが完成する事により、「癌抑制型マイクロRNA」と「癌促進型遺伝子」、「癌促進型マイクロRNA」と「癌抑制遺伝子」の探索が効率よく行えるようになる。また、ホルモン感受性前立腺癌とCRPC患者の剖検検体より骨転移部位や肝転移部位を比較する事により、骨転移や肝転移に特徴的な「機能性RNAネットワーク」の探索が可能となった。 今回は、前立腺癌で発現が低下するマイクロRNAに着目し、前立腺癌細胞株(PC3, DU145)を用いて、その機能解析を行った。miR-205-5pはCRPCにおいて発現が低下するが、前立腺癌細胞株を用いて高発現させると、その標的遺伝子HMGB3の発現をコントロールし、前立腺癌の進展を抑制すること(Journal of Human genetics)、miR-99a-3pがNCAPG の発現を制御し、前立腺癌が去勢抵抗性へと進行するのを抑制することを明らかにした。TCGAデータベースを用いると、前立腺全摘除術後の再発が標的遺伝子のNCGPGの発現が高いほど、再発率も高いことが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
29年度の研究計画 として、1)去勢抵抗性前立腺癌マイクロRNA発現プロファイルの完成、 2)前立腺癌細胞株を用いたmiRNAの機能解析順に研究をすすめる予定であった。すでに、剖検検体から得られたRNAをもとに、ゲノムワイドの遺伝子発現解析を行い、去勢抵抗性前立腺癌におけるのマイクロRNA発現プロファイルを完成した。そのプロファイルのなかで、発現が低下しているものに着目し、miR-145-3p, miR-150, miR-149, miR-99-3a, miR-451, miR-205-5pについて解析した。In silicoのデータベースを利用して、それぞれの標的遺伝子となりうる相補的配列を有する遺伝子を探索し、また実際の前立腺癌患者において発現が更新している遺伝子を標的遺伝子候補として挙げた。また、その発現を2群に分けて、前立腺全摘除術後の再発曲線をKaplan-Meier法で検討したところ、それぞれ、発現が高い群において再発率が低いことが示された。以上の結果はすでに論文化し、泌尿器科学会総会、米国泌尿器科学会において発表した。以上のことから、研究実施計画の通りに平成29年度の研究は達成されている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、前立腺癌のホルモン療法耐性にかかわる分子メカニズムの解明を行う。 治療抵抗性や遠隔転移に関わる分子経路の遮断法を考案し、その有効性をin vitro/in vivo の系で検証する。 先ずは、活性化シグナルを遮断する既存の治療薬を探索し、その前立腺癌の転移抑制効果をin vitro/in vivoで検証する。具体的には、申請者は本研究の準備として、前立腺癌同所移植による「前立腺癌転移モデルマウス」の作成に取り組む。前立腺癌細胞株(PC3)に、Green Fluorescent Protein (GFP)を組み込んだ細胞株(PC3-GFP)を作成し、この細胞株を、マウスの前立腺側面に同所移植する事により、高率に多臓器に転移する実験系を確立する。この実験系では、PC3にGFPが組み込まれているため、癌の転移の様子を、経過時間的に、体外からモニターする事が可能である。
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次年度使用額が生じた理由 |
Agilent社のマイクロアレイ解析に36,2880円使用した。初年度の経費を多めに見積もっていたが、すでにこの4月には論文を作成し、投稿代金として340,000円ほど支払っている。さらなる細胞レベルの機能解析は本年度に行うため、予算は本年度に使用する予定となった。
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