研究課題/領域番号 |
17K11160
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
小島 聡子 帝京大学, 医学部, 准教授 (10345019)
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研究分担者 |
関 直彦 千葉大学, 大学院医学研究院, 准教授 (50345013)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | マイクロRNA / 去勢抵抗性前立腺癌 / CRPC / 機能性RNA / 転移 / 浸潤 |
研究実績の概要 |
進行性前立腺癌は、ホルモン療法に耐性のcastration-resistant prostate cancer )CRPCに進展し、予後不良となる。近年、新規の治療薬が開発されているが、未だにCRPCの予後は短く、約3年である。 我々は機能性RNA (microRNA)に着目し、2004年以降前立腺癌のCRPCへの進展およびアンドロゲン不応性の機序について研究を続けている。本研究では実際にCRPCとなって亡くなられた前立腺癌症例の剖検検体を用いて「CRPCにおける機能性RNA発現プロファイル」を作成し、論文発表を行った(Br J Cancer. 2017 Jul 25;117(3):409-420. doi: 10.1038/bjc).本研究では、そのプロファイルの上位リストに含まれているmicroRNAであるmiR-205-5pに着目し、その前立腺癌における機能を解析した(J Hum Genet. 2018 Feb;63(2):195-205. doi: 10.1038/s10038-017-0371-1.)。すでに、miR-205-5pは他の癌腫(肺がん、乳がん、食道がん)においてepitherial-mesenchimal transition (EMT)を抑制する因子として知られており、前立腺癌における抗癌作用はすでに知られているので、その標的遺伝子の探索を行った。Target scan databaseおよびTCGA databaseを用いて解析し、7個の遺伝子がその候補に挙げられた。なかでも、前立腺癌術後再発に最も関与したのはhigh-mobility group box 4 (HMGB3)遺伝子であった。前立腺癌細胞株 PC3, DU145において、MiR-205-5Pを遺伝子導入すると、HMGB3の発現レベルがRNAおよび蛋白レベルで低下した。ルシフェラーゼアッセイにおいてもヒトHMGB3 3'UTRにMiR-205-5pが結合することを確認した。PC3, DU145において、HMGB3の発現をsi-RNAにてブロックすると、細胞の転移・浸潤能が低下することが示された。以上のことから、CRPCの進展に最も関与するのはHMGB3であり、HMGB3の発現は、miR-205-5pによって直接的にコントロールされることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度の研究計画として、1)去勢抵抗性前立腺癌のマイクロRNAプロファイルから得られた情報を元に、前立腺癌の進展、転移、浸潤に関与するmicro-RNAを同定し、前立腺癌における機能を明らかにすること、2)さらに、それらのmicro-RNAの標的遺伝子を同定し、その機能を明らかにすること、であった。すでに、剖検検体から得られたRNAを元にCRPCにおけるmicroRNAの網羅的発現解析は終了した(Br J Cancer. 2017 Jul 25;117(3):409-420. doi: 10.1038/bjc)。昨年に引き続き、miR-205-5pの発現解析および機能解析、標的遺伝子の同定および機能解析を行った(J Hum Genet. 2018 Feb;63(2):195-205. doi: 10.1038/s10038-017-0371-1.)。以上の結果は、日本泌尿器科学会総会、泌尿器分子生物学会にて発表した。以上のことから、平成30年度の研究は達成されている。
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今後の研究の推進方策 |
マイクロRNAの発現を、予後予測に用いるために、血液中のエクソソームからのmicroRNA同定をめざす。CRPC患者の血清からmiRNAの採取を試み、組織と同様な発現パターンを示すかどうかを検討する。さらに、今後バイオマーカーとして治療の効果を予測するために、血液中のmiRNA発現と悪性度や進行度、予後との関連があるかどうか、検討する。細胞株の培養液中にもmiRNAが分泌される可能性があり、その発現を基本に検討する必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は論文投稿料に370000円を要した。次年度には、エクソソームからのmicroRNA抽出を行うために、出費が見込まれる.
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